離婚によるマンション売却|残債・名義・税金の3つの要点
2026年7月14日

マンションを売却する理由として少なくないもののひとつに、離婚があります。
できればこういう理由でマンション売却を考えたくはないのですが、そうは言っても起きてしまうことです。
離婚がきっかけのマンション売却は、「住宅ローン残債と売却価格のどちらが大きいか(アンダーローンかオーバーローンか)」で取るべき手順がまったく変わります。ここでは実務でご相談の多い3つのパターンを、財産分与・税金・住宅ローンの名義という観点から整理してご紹介します。
なお、2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後に財産分与を請求できる期間は2年から5年へ延長されました(2026年4月1日以降に離婚した場合に適用。それ以前の離婚は従来どおり2年)。時間に余裕ができたとはいえ、住宅ローンや名義の問題は先送りするほどこじれます。離婚の話し合いと並行して、マンションの「今の価格」と「残債」を早めに把握しておくことが、結局はいちばんの近道です。
マンション売却価格よりも住宅ローン残債が少ない(アンダーローン)場合
離婚がきっかけのマンション売却でまず覚えておきたいことは、
住宅ローンもマンションの売却価格も財産分与の対象となるということです。
つまりマンションを売却して利益が出た場合、それは財産分与の対象になるということです。
分与の対象になるのは売却価格そのものではなく、「売却価格 − 住宅ローン残債 − 売却にかかる諸費用」=手元に残るお金です。たとえば売却価格3,000万円・残債2,000万円・諸費用(仲介手数料・登記費用など)約120万円であれば、残る約880万円が分け合う対象になります。諸費用を差し引く前の金額で「半分ずつ」と決めてしまうと、後からもめる原因になりますのでご注意ください。
実際に私の友人が離婚時にマンション売却を検討したことがありました。
友人は不動産業を営んでおりましたので、自然と売るときの状況も想定して自宅マンションを購入していました。
その後、不幸にも離婚することとなってしまい、マンションも売却することにしたのですが……
物件の見立てが良かったためか、なんと大幅な利益が出ることになり、それはそれでかなりモメたそうです(苦笑)
後に書くオーバーローンの場合に比べれば少ないケースだとは思いますが、
こういう場合も事前に意識して検討することが必要ですね。利益が出るときこそ、査定額の根拠と諸費用・税金を先に共有しておくと、話し合いが感情論になりにくくなります。
マンション売却価格よりも住宅ローン残債が多い(オーバーローン)場合
幸いにして私自身にはまだ離婚の経験がないのですが、両親がまさにこのパターンでした。
マンションの売却価格が住宅ローンを返済できるだけの価格に届かず、
また母親が住み続けたいと希望したこともあり、結局売却はしませんでした。
このときは私の知識が浅く、もっと良い方法を考えることができずに後悔していました。
マンションの売却査定を依頼したのは購入した不動産屋のみで、
ほかの不動産屋には一切声をかけず、そのことも不動産屋に伝えていました。
悪い見方をすれば、足下を見られてしまっていたかもしれません。
今の知識であれば、一社のみに査定依頼するということは絶対にしませんし、ほかにもさまざまな方法を試みると思います。
この苦い経験をもって、同じような悩みを相談された際には、必ず複数社の査定(一括査定)を利用するように勧めています。
オーバーローンのマンションは、売却代金でローンを完済できないと金融機関が抵当権を外してくれないため、原則としてそのままでは売れません。現実的な選択肢は次の3つです。
- 不足分を自己資金で埋めて売る……預貯金や親族からの援助で差額を用意し、通常の売却(仲介)で引き渡す。最も傷が浅く、話も早い方法です。
- 任意売却を検討する……返済が滞っている・滞りそうな場合に、金融機関の同意を得て残債があるまま売却する方法。残った債務は返済が続くため、金融機関との交渉が前提です。
- 売らずに住み続ける……次章のとおり、名義とローン契約の整理が必要です。
売却は考えずにどちらかが住み続けると決定した場合
実はこれが一番難しいパターンです。
マンションの名義人の問題はもちろん、住宅ローンの残債があれば、その保証人(連帯保証人・連帯債務者)についても見直しが必要となります。
また、マンションを売却せずともマンションは財産分与の対象となるので、どちらにせよ資産価値を算出しておくことは必要になってきます。協議・調停の場では、不動産会社の査定書(複数社)で価格を確認するのが一般的で、価格そのものが大きな争点になる場合に不動産鑑定士の鑑定評価書を用いることがあります。
財産分与については不動産の領域を超えた知識が必要になりますのでここでは割愛しますが、
仮にマンションを売却しないとしても、市場においてどれだけの価値があるかを知っておくことは重要です。
ここで最大の落とし穴になるのが住宅ローンです。離婚協議書や公正証書で「夫が返済する」と取り決めても、それは夫婦間の約束にすぎず、金融機関には対抗できません。連帯保証人や連帯債務者から抜けるには金融機関の承諾が必要で、承諾を得るには「代わりの保証人を立てる」「単独名義で借り換える」といった対応が求められます。契約の形ごとに、確認すべき点を整理しました。
借り換えや債務者の変更は、住み続ける側の収入だけで審査を通せるかどうかが分かれ目です。単独では通らない場合、結局は売却が最も確実な解決策になることが少なくありません。金融機関に相談する前に、査定額と残債の数字をそろえておきましょう。
| 住宅ローンの契約形態 | 離婚時に起きやすい問題 | 実務上の対応 |
|---|---|---|
| 単独名義(夫または妻のみが債務者) | 返済者と居住者が別になり、滞納すると住んでいる側が退去に追い込まれる | 返済状況を確認できる形にする。名義人が住まないなら、住む側への借り換えや売却も検討 |
| 連帯保証(一方が債務者・他方が連帯保証人) | 離婚しても連帯保証は自動では外れず、滞納時に一括請求されることがある | 金融機関の承諾が必要。代替保証人・借り換え・売却のいずれかで解消する |
| 連帯債務(夫婦2人で1本のローン) | 2人とも債務者のままで、住んでいない側も返済義務を負う | 単独債務への変更は金融機関の審査次第。難しければ売却が現実的 |
| ペアローン(夫婦それぞれが借入・互いに連帯保証) | 持分もローンも2本のままで、権利関係が複雑化する | 一方が他方分をまとめて借り換える(審査あり)か、売却して精算する |
離婚にともなうマンション売却・財産分与でかかる税金
お金の話でつまずきやすいのが税金です。国税庁の取り扱いにもとづき、要点だけ押さえておきましょう。
- 売却して利益(譲渡所得)が出たら、譲渡所得税・住民税がかかります。ただしマイホームであれば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」が使える可能性があります。住まなくなった家でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば対象になり得ます(別居してから時間が経つと使えなくなる点に注意)。
- 財産分与としてマンションそのものを相手に渡した場合、渡した側に譲渡所得の課税が行われます(分与時の時価で譲渡したものとして扱われます/国税庁 No.3114)。「お金をもらっていないのに課税されるのか」と驚かれる方が多い論点です。
- この3,000万円の特別控除は、配偶者など特別な関係にある人への譲渡には使えません。そのため、財産分与で自宅を渡すなら「離婚が成立した後」に分与を実行することで、控除の適用を受けられる可能性があります(順序が結果を大きく変えます)。
- 財産分与を受けた側には、原則として贈与税はかかりません(分与が過大な場合や、税を免れる目的の離婚と認められる場合を除く)。
離婚によるマンション売却でよくいただくご質問
Q. 離婚したら、住宅ローンの連帯保証人は自動的に外れますか?
外れません。連帯保証は金融機関との契約であり、離婚協議書で「保証人から外す」と取り決めても金融機関には効力が及びません。解消するには金融機関の承諾(代替保証人の設定、単独名義への借り換え、売却による完済)が必要です。Q. 相手が住み続けます。売らないまま名義だけ変えられますか?
住宅ローンが残っている場合、金融機関に無断で名義を変えると契約違反(期限の利益の喪失=一括返済の請求)になり得ます。必ず金融機関に相談し、借り換え等で債務の整理とセットで進めてください。Q. 売却するなら、離婚の前と後のどちらがよいですか?
売って現金を分けるだけなら、離婚前後で税務上の大きな違いは生じにくい一方、マンションそのものを相手に渡す(財産分与する)場合は、離婚成立後に実行するほうが3,000万円特別控除を使える可能性があります。一方で、別居が長引くと居住用財産の特例の期限(住まなくなって3年目の年末)に近づくため、時間軸も含めて設計してください。Q. 財産分与はいつまでに請求できますか?
2026年4月1日施行の改正民法により、2026年4月1日以降に離婚した場合は5年(それ以前の離婚は2年)です。期限内でも、住宅ローンや名義の問題は早く着手するほど選択肢が多く残ります。Q. 相手が査定を1社にしか頼みたがりません。
価格の妥当性を確かめる意味でも、複数社の査定は双方にとって公平です。査定額のばらつきと、その根拠(成約事例・売り出し中の競合)を並べて見ることで、話し合いの土台になります。まとめ:まず「残債」と「複数社の査定額」をそろえる
離婚によるマンション売却は、感情と数字が同時に動く場面です。だからこそ、最初にやるべきことは①住宅ローン残債の確認②複数社の査定で今の価格を知ることの2つに尽きます。この2つがそろえば、アンダーローンなら手取りをどう分けるか、オーバーローンなら不足分をどうするか、住み続けるなら名義とローンをどう整理するかという議論に、事実ベースで進めます。
査定額は不動産会社によって差が出ます。1社だけの数字で決めず、複数社を比較してから判断してください。








