住宅ローンが残るマンションの売却方法|残債別の進め方
2026年7月13日

事情があってマンションを売却したいけれど、住宅ローンの残債をどうすればよいのか——売主の方から最も多くいただく相談のひとつです。ここではマンションの売却価格と住宅ローン残債の関係を場合分けして、実際に取るべき方法を順に解説します(税制・手数料の記載は2026年7月時点の情報です)。
大前提:引き渡し時にローンを完済し、抵当権を抹消する
住宅ローンを借りるとき、金融機関はその物件に抵当権(担保権)を設定しています。買主は抵当権が付いたままの部屋を買うことはできません(返済が滞れば競売にかけられてしまうため)。そのため、売却代金の受け取りと同時に住宅ローンを一括返済し、抵当権抹消の登記を行うのが実務の原則です。
逆にいえば、「残債があるから売れない」わけではありません。売却代金でローンを完済できる見込みが立つかどうかが分かれ目になります。まずは金融機関からローン残高証明書(または返済予定表)を取り寄せ、引き渡し予定月の残債額を正確に把握してください。
マンション売却価格が住宅ローン残債を超える場合(アンダーローン)
売却価格が残債を上回るケースは、手続き上の大きな問題はありません。ただし注意したいのは、売却には諸費用がかかるという点です。とくに仲介手数料は金額が大きく、「売却価格−残債」がわずかなプラスだと、費用を払った結果持ち出しが発生することがあります。
判定式はシンプルです。
手取り = 売却価格 −(住宅ローン残債 + 売却諸費用 + 税金)
たとえば売却価格3,000万円・残債2,400万円のマンションなら、仲介手数料の上限が約105.6万円(税込)、抵当権抹消や印紙税、全額繰上返済の手数料などを合わせて諸費用は概ね110万円前後。手取りはおよそ490万円程度、という並びになります(あくまで概算例で、実際の金額は物件・金融機関によって変わります)。
マンション売却の諸費用や仲介手数料についてはコチラで詳しく解説しております。
売却でかかる主な費用の早見
| 費用 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料(上限) | 売買価格800万円超:(価格×3%+6万円)×1.1(税込) | 法律(告示)で定められた上限。2024年7月1日以降、800万円以下の「低廉な空家等」は30万円×1.1(税込33万円)まで |
| 抵当権抹消の登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 | マンションは建物と敷地権で複数個になることがある。司法書士に依頼すれば別途報酬 |
| 印紙税(売買契約書) | 契約金額に応じて数千円〜数万円 | 軽減措置の有無で税額が変わるため、最新は国税庁でご確認ください |
| 全額繰上返済手数料 | 0円〜数万円程度 | 金融機関・借入商品・手続き方法(窓口/ネット)で異なる |
| 譲渡所得税・住民税 | 利益が出た場合に課税 | マイホームは3,000万円の特別控除が使える場合がある(要件あり) |
仲介手数料は上限額であって定価ではありません。金額の根拠と販売活動の内容をセットで確認しましょう。
マンション売却価格が住宅ローン残債を下回る場合(オーバーローン)
まず大きな前提として認識しなければならないのは、マンションを売却する際には住宅ローンを一括返済しなければならないということです。足りない分は自己資金で用意するのが原則で、例外的な方法もないわけではありませんが、安易におすすめできるものではありません。
不足額を埋める方法は、実務上おおむね次の3つです。
| 方法 | どんなケースに向くか | 注意点 |
|---|---|---|
| 自己資金で不足分を補う | 不足額が数十万〜数百万円で、預貯金で埋められる | 引き渡し日に決済できるよう、資金の準備時期を逆算する |
| 住み替えローン(買い替えローン)を使う | 売却と同時に新居を購入する住み替え | 新居の担保価値を超える借入になるため審査は厳しめ。売却と購入の決済日を合わせる必要があり、取扱いの有無・条件は金融機関ごとに要確認 |
| 任意売却 | 返済が困難で、自己資金も住み替えも難しい | 債権者(金融機関)の同意が必須。信用情報への影響が生じ得るため、まず金融機関へ早めに相談を |
売却価格の差は「査定の数」で埋まることがある
一括返済の自己資金が足りなくても、どうしてもマンションを売却しなければならない事情はあります。こういう場合は諦めずに多くの不動産会社に一括査定してもらうことで道が開けることがあります。
一口に査定と言っても、査定額は不動産会社によって大きく異なることがしばしばあります。私が実際に一括査定に出したあるマンションでは、最大価格と最低価格に何と290万円もの差が出ました。これだけ大きな差額が出るので、査定を依頼する不動産会社を幅広く見つけることで、一括返済への希望がつながることもあります。
ただし、高い査定額=売れる価格ではありません。媒介契約を取るために高めの査定額を出す会社もあります。査定書に成約事例・売出事例が示されているか、いつまでにいくらで売る戦略なのか——金額の根拠を必ず確認してください。
とはいえ、一社ずつ不動産会社に連絡を取って査定依頼をしていたのでは時間がいくらあってもたりません。まずは一括査定サイトを使って幅広く査定依頼をすることで、効率的に、より高い価格でマンションを売却する道が見えてきます(私はこれ以来、必ず一括査定サイトを使っています)。 一括査定サイトを使って賢くマンション売却を成功させましょう。
売って損が出たときに使える税金の特例
オーバーローンで売却して譲渡損失が生じた場合、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5の2)を使える可能性があります。一定の要件を満たせば、その損失を給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない分は翌年以後3年間繰り越して控除できます(買換資産=新しいマイホームを取得しない場合でも適用できます)。
主な要件は次のとおりです(国税庁 No.3390)。
- 売った年の1月1日時点で、家屋・敷地の所有期間がともに5年超であること
- 売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 譲渡価額がその住宅ローン残高を下回っていること
- 親子・夫婦など特別の関係がある人への売却でないこと など
損益通算できる金額は「売買契約日の前日のローン残高 − 売却価額」が限度です。また繰越控除は、合計所得金額が3,000万円を超える年は適用できません。適用期限は国土交通省の公表資料で「令和9年12月31日までの譲渡」とされています(税制改正で延長・変更されることがあるため、必ず国税庁・国土交通省の最新情報をご確認ください)。利益が出た場合は逆に、マイホームの3,000万円特別控除(国税庁 No.3302)の対象になるかを確認しましょう。いずれの特例も確定申告が必要です。
よくある質問
Q. ローンが残っていても売りに出せますか?
売り出すことはできます。引き渡し(決済)のときに売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消すれば問題ありません。売り出す前に残債額と査定額を突き合わせ、完済できるかを確認するのが実務の順序です。
Q. 残債がいくらか分からないときは?
借入先の金融機関にローン残高証明書を請求するか、毎年送られてくる返済予定表・残高証明で確認できます。引き渡しの月まで返済が進むため、「今日の残高」ではなく「引き渡し予定月の残高」で計算してください。
Q. 売却代金でローンを完済したら、抵当権は自動で消えますか?
自動では消えません。抵当権抹消の登記申請が必要です。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、売却時は所有権移転登記と同時に司法書士へ依頼するのが一般的です。
Q. 住み替えローンを使えば、いくらでもオーバーローン分を借りられますか?
いいえ。新居の担保価値を超える借入になるため審査は通常より厳しく、借入可能額にも返済負担率などの制約があります。取扱いの有無・上限・条件は金融機関ごとに異なるため、売却活動を始める前に借入先や候補行に相談しておくと安全です。
まとめ
住宅ローンが残るマンションの売却は、「引き渡し時に完済し、抵当権を抹消できるか」の一点に尽きます。まず残債額を確定し、複数社の査定で売却価格の幅を掴み、そこから諸費用と税金を引いた手取りで判断してください。
不足が出る場合も、自己資金・住み替えローン・任意売却と道はあります。焦って安易な方法を選ぶより、早めに金融機関と不動産会社の双方へ相談することが、結果的に手取りを守る一番の近道です。なお税制・手数料の制度は改正されることがあるため、最新の取り扱いは国税庁・国土交通省・各金融機関の公式サイトでご確認ください。








