マンション売却の確定申告|3000万円控除・譲渡所得税をやさしく解説
2026年7月15日

会社員の方は年末調整で税金の手続きが完了するため、確定申告に触れる機会が少なく、「確定申告」と聞くだけで身構えてしまう方も多いかもしれません。しかし、マンション・不動産を売却した年は、売却益(利益)が出た場合も、売却損(損失)が出た場合も、確定申告が必要になるケースがあります。申告は原則として、売却した翌年の2月16日〜3月15日(曜日により前後します)に、お住まいの地域を管轄する税務署で行います。
特にマイホーム(居住用財産)の売却には手厚い優遇特例があり、うまく使えば税金がまったくかからなかったり、給与にかかった所得税まで戻ってきたりすることがあります。払いすぎも申告漏れも防げるよう、実務のポイントを整理します。
まずは「売却益」か「売却損」かを判定する
確定申告の目的は、売却益(譲渡所得のプラス)と売却損(マイナス)で大きく異なります。最初に、ご自身の売却がどちらに当たるのかを次の式で確認しましょう。
譲渡所得(売却益)の正しい計算式
譲渡所得は、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて求めます。
譲渡所得 = 譲渡価額(売却金額) −(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費…購入代金や購入時の仲介手数料・登記費用などの合計から、建物部分の減価償却費を差し引いた金額です。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使うこともできます。
- 譲渡費用…売却時の仲介手数料、印紙税、測量費など、売るために直接かかった費用です。
この譲渡所得がプラスなら「売却益」、マイナスなら「売却損」です。まずはこの区分を押さえることが、正しい申告の出発点になります。
売却益が出た場合:3,000万円の特別控除
マイホームを売って譲渡所得が出た場合でも、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使えば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。所有期間の長短を問わず利用でき、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金はかかりません。マイホームの売却でたまたま出た利益にまで重い税金をかけない、という趣旨の特例です。ただし、この控除で税額が0円になる場合でも、控除を受けるには確定申告が必要です。
この控除を受けられる主な条件は次のとおりです。
(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。以前に住んでいた家屋等の場合は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
(2) 売った年の前年および前々年に、この特例(またはマイホームの買換え・交換の特例、マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例)の適用を受けていないこと。
(3) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(4) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
(5) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
要約すると、①直近2年でこの特例を使っていない ②売却先が親族等でない ③住まなくなってから3年目の年末までに売るといった要件を満たす一般的なマイホーム売却であれば、3,000万円控除を受けられるケースが多いといえます。ご自身が適用対象になるか不安な場合は、国税庁の電話相談センターや税務署、税理士に確認するのが確実です。
譲渡所得にかかる税率(所有期間で変わる)
控除しきれなかった課税譲渡所得には、売った年の1月1日時点の所有期間に応じた税率がかかります(復興特別所得税2.1%を含む)。マイホームを10年超所有していた場合は、さらに低い軽減税率の特例(3,000万円控除と併用可)も使えます。

| 区分 | 所有期間(売却年の1月1日時点) | 税率(所得税+復興税+住民税) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 10年超所有の軽減税率(居住用) | 10年超・課税譲渡所得6,000万円以下の部分 | 14.21% |
同じマイホームでも、所有期間が5年を超えるかどうかで税率がほぼ倍違います。売却のタイミングを検討する際の重要なポイントです。
売却損が出た場合:損益通算・繰越控除で税金が戻ることも
譲渡所得の計算がマイナス(売却損)になった場合、一定の要件を満たすマイホームの売却損に限り、その損失を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)でき、その年で控除しきれない分は翌年以後3年間にわたって繰り越して控除(繰越控除)できます。売却した年と合わせて最大4年間、所得税・住民税が軽くなる可能性があります。
ただし、すべての売却損が対象になるわけではありません。土地・建物の譲渡損失は、原則として給与所得などとは損益通算できません。給与所得等と相殺できるのは、次のいずれかの「居住用財産の譲渡損失の特例」に当てはまる場合に限られます(いずれも売った年の1月1日時点で所有期間5年超などの要件があります)。
- マイホームを買い換えた場合…新しいマイホームに買い換えたときに生じた譲渡損失(国税庁「No.3370」)。
- 住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合…売却価格が住宅ローン残高を下回るときなどに生じた譲渡損失(国税庁「No.3390」)。
どちらの特例も、適用を受けるには確定申告が必須です。損失が出て納税が発生しない場合でも、申告することで税金が戻る可能性があるため、忘れずに手続きしましょう。要件は細かいため、対象になるか迷う場合は国税庁のサイトや税務署・税理士で確認することをおすすめします。
確定申告の時期と主な必要書類
確定申告は、売却した翌年の2月16日〜3月15日(曜日により前後)に行います。主な必要書類は次のとおりです。
- 確定申告書(分離課税用)、譲渡所得の内訳書
- 売買契約書の写し(購入時・売却時の両方)
- 取得費・譲渡費用がわかる領収書等(仲介手数料、登記費用など)
- 特例を使う場合は、その特例ごとに定められた計算明細書・添付書類
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って金額を入力するだけで申告書を作成できます。
マンション・不動産売却の確定申告 よくある質問
Q. 売却して利益が出ませんでした。それでも確定申告は必要ですか?
A. 税額が出ないだけであれば申告義務はありません。ただし、損益通算・繰越控除の特例で税金が戻る可能性があるため、要件に当てはまるなら申告した方が有利です。一方、3,000万円特別控除で税額が0円になる場合は、控除を受けるために申告が必要です。
Q. 取得費(買ったときの金額)がわかる書類が見つかりません。
A. 売買契約書などで取得費が確認できない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使えます。ただし実際より取得費が少なくなり税額が増えることが多いため、まずは契約書や当時の領収書を探すことをおすすめします。
Q. 夫婦の共有名義のマンションを売りました。控除はどうなりますか?
A. 共有者それぞれが要件を満たせば、1人あたり最高3,000万円まで特別控除を受けられます(持分に応じて各自が申告します)。
Q. 住宅ローンが残ったまま売って、残債が売却代金で返しきれません。
A. 一定の要件を満たせば「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたときの特例(No.3390)」で損益通算・繰越控除が使える場合があります。住み替えでローンが残るケースでは、住み替えローンや残債の借り換えといった資金計画も含め、早めに検討しておくと安心です。
まとめ
マンション・不動産を売った年は、売却益・売却損のどちらでも確定申告が節税のカギになります。売却益なら3,000万円特別控除や10年超の軽減税率で税負担を大きく抑えられ、売却損なら要件を満たせば給与所得などと相殺して税金が戻ることもあります。いずれも特例の適用には確定申告が必須です。税制は改正されることがあるため、最新の要件や税率は国税庁の公式サイトで確認し、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。








