おうちダイレクトは終了|経緯と現在の売却手段を解説
2026年7月13日

※本記事は、2015年11月に「おうちダイレクト」が始まったことを報じた記事です。その後、「おうちダイレクト」の売主向けサービス(セルフ売却)は2022年6月30日をもって提供を終了しました。当時の記録として本文を残したうえで、終了までの経緯と、いま同じ発想で売却を考えるときの選択肢を追記しています(記載は2026年7月時点の情報です)。
2015年11月に始まった「おうちダイレクト」とは(当時の内容)
Yahoo!(ヤフー)とソニー不動産は、2015年11月5日にCtoC(個人間)のマンション売買サイト「おうちダイレクト」のサービスを開始しました。開始時点では都心6区のマンションが対象で、対象地区は順次拡大していく計画とされていました。
「おうちダイレクト」の最大の特徴は、売主が自分で決めた売却金額で買主を探せる点にありました。サイト上で購入希望者と売主が直接情報のやり取りを行える仕組みも提供され、実際の物件見学・条件調整・決済・引き渡しといった実務はソニー不動産が担当。手数料は買主から成約価格の3%+6万円を受け取る料金体系でした(いずれも当時の内容です)。
なぜ注目されたのか——「両手仲介」への問題提起
日本の不動産仲介では、1社が売主と買主の双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」が広く行われてきました。手数料を二重に得られる一方で、売主の利益(少しでも高く売る)と買主の利益(少しでも安く買う)が同じ担当者の中で衝突するため、利益相反になりやすいという指摘が根強くあります。
おうちダイレクトのセルフ売却は買主からしか手数料を受け取らない設計で、当時の業界慣習とは異なる手数料体系として大きな話題になりました。売主が自ら価格を決め、不動産会社を通さずに買主を探せる点も含め、「売主本位の仲介とは何か」を業界に問いかけたサービスだったと言えます。
その後どうなったか(2022年6月30日にセルフ売却が終了)
ソニー不動産は2019年にSREホールディングスへ商号変更し、不動産仲介は「SRE不動産」として展開されてきました。そして2022年3月2日、SREホールディングスはヤフーとの業務提携の見直しを発表。これに伴い、おうちダイレクトの共同運営は終了し、売主が自ら売却を行う「セルフ売却」は2022年6月30日に提供を終了しました(ヤフー側も同日でのサービス終了を公表しています)。
- セルフ売却(個人が自ら売り出す仕組み):2022年6月30日で終了
- 一括査定(プロフェッショナル売却):SREホールディングスが継続し、「おうちクラベル」として提供
- 不動産仲介:SREホールディングスが提供(現在のサービス名は「SREリアルティ」/旧SRE不動産・源流はソニー不動産)
つまり、「自分で値付けして個人に直接売る」というおうちダイレクト独自の売却手段は現在は利用できませんが、AI査定を含む一括査定と、片手仲介を掲げる仲介サービスは形を変えて残っている、というのが現状の整理です。
いま同じ発想でマンションを売るなら
「仲介会社の言い値ではなく、自分で納得して値付けしたい」「両手仲介による囲い込みが心配だ」という当時のニーズは、いまも有効です。現在は次のような組み合わせで近い形を作れます。
- 複数社の査定を比較する:一括査定(おうちクラベルなど)や個別の訪問査定で、価格の根拠(成約事例・在庫状況)を各社に説明させる。査定額の高さではなく根拠の妥当性で選ぶのが実務の鉄則です。
- 成約事例で相場を自分で確かめる:国土交通省の「不動産情報ライブラリ(不動産取引価格情報)」や、レインズが公開する成約価格の統計を見れば、売主自身が相場観を持てます。
- 媒介契約の型と報告義務を理解する:専任媒介・専属専任媒介は活動報告やレインズ登録が義務づけられており、囲い込みが疑わしいときは販売状況の報告内容を書面で確認できます。
なお、仲介会社を通さない完全な個人間売買は、契約書作成・重要事項説明・契約不適合責任・住宅ローン特約など、トラブルの火種を売主自身が負うことになります。手数料の節約額と引き換えに負うリスクを冷静に比べてください。
仲介手数料の上限は法律(告示)で決まっている
仲介手数料は不動産会社が自由に決められるものではなく、宅地建物取引業法にもとづく国土交通大臣の告示(昭和45年建設省告示第1552号)で上限が定められています。売主・買主それぞれから受け取れる上限は次のとおりです。
| 売買価格(税抜) | 仲介手数料の上限(依頼者の一方から・税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格 × 5% × 1.1 | 空き家等で「低廉な空家等」に該当する場合は、2024年7月1日以降、30万円 × 1.1(=33万円)まで受け取れる特例あり |
| 200万円超〜400万円以下 | (売買価格 × 4% + 2万円)× 1.1 | |
| 400万円超〜800万円以下 | (売買価格 × 3% + 6万円)× 1.1 | |
| 800万円超 | (売買価格 × 3% + 6万円)× 1.1 | いわゆる「3%+6万円」の速算式 |
2024年7月1日施行の告示改正により、売買価格800万円以下の「低廉な空家等」については、上限が30万円(税込33万円)まで引き上げられ、売主だけでなく買主からも受け取れるようになりました。空き家の流通を促す目的の改正で、地方の低価格物件を売るときは手数料の水準が従来と変わる点に注意してください。上限額であって定価ではないため、値引きの可否は各社との交渉次第です。
よくある質問
Q. おうちダイレクトのセルフ売却は今も使えますか?
使えません。SREホールディングスとヤフーの発表のとおり、2022年6月30日で提供を終了しています。同名のサービスを案内するページが検索結果に残っていることがありますが、現在は新規の売り出し登録はできません。
Q. 「おうちクラベル」はおうちダイレクトと同じものですか?
同じではありません。おうちダイレクトのうち一括査定にあたる機能が2022年7月以降「おうちクラベル」として引き継がれたもので、売主が自ら値付けして直接売り出す「セルフ売却」の機能は引き継がれていません。
Q. 買主からだけ手数料を取る「片手仲介」なら、必ず高く売れますか?
片手仲介は利益相反が起きにくい仕組みですが、売れる価格は最終的に物件の条件と相場で決まります。「片手だから高く売れる」と断定はできません。売却実績・販売活動の中身・レインズへの登録状況を確認して判断してください。
Q. 個人間で売れば仲介手数料はゼロにできますか?
仲介会社を挟まなければ手数料はかかりませんが、契約書の作成や契約不適合責任、代金決済と抵当権抹消の同時履行など、専門知識が必要な実務をすべて自分で負うことになります。住宅ローンが残っている場合はとくに慎重な判断が必要です。
まとめ
おうちダイレクトは、売主が自分で価格を決めて売り出せる仕組みと、買主からのみ手数料を受け取る料金体系で、日本の仲介慣習に一石を投じたサービスでした。セルフ売却そのものは2022年6月30日に終了しましたが、そこで提起された「売主の利益は本当に守られているか」という視点は、いま媒介契約を結ぶときにこそ役立ちます。
査定額の根拠を説明できるか、販売状況を包み隠さず報告するか、手数料は何にいくらかかるのか——この3点を確認するだけで、売却の手取りは大きく変わります。手数料や制度は改正されることがあるため、最新の取り扱いは各社の公式サイトや国土交通省の公表資料でご確認ください。








