中古マンションが選ばれる時代へ|成約数と新築供給の最新データ
2026年7月30日

2016年、「中古マンションの成約件数が新築マンションの供給戸数を初めて上回った」というニュースが話題になりました。あれから約10年、その差は縮まるどころか大きく開いています。
2025年の首都圏では、中古マンションの成約件数が新築分譲マンションの発売戸数の2倍を超えました。マンションの売却を考えている方にとって、これは「買い手がどこを見ているか」が変わったことを意味します。数字を正確に押さえたうえで、売主として何を考えるべきかを整理します。
2025年の首都圏データ
| 指標 | 2025年(首都圏) | 前年比・補足 |
|---|---|---|
| 中古マンション成約件数(レインズ) | 49,114件 | 31.9%増・3年連続で前年超え |
| 新築分譲マンション発売戸数(不動産経済研究所) | 21,962戸 | 4.5%減・1973年以降の最少を更新 |
| 中古マンションの成約価格 | 5,200万円 | 6.3%上昇・13年連続の上昇 |
| 新築分譲マンションの平均価格 | 9,182万円 | 17.4%上昇・初の9,000万円台 |

新築の発売戸数は、統計をさかのぼれる1973年以降で最も少ない水準です。かつて首都圏の新築マンションは2000年に9万5,635戸が発売された時期もありましたから、当時のおよそ4分の1にまで絞られたことになります。
数字を読むときの3つの注意点
この比較はインパクトがありますが、そのまま「中古が新築の2倍人気」と読むのは正確ではありません。実務家として、次の3点は必ず添えておきたいところです。
1.「成約件数」と「発売戸数」は性質の違う数字です。成約件数は実際に売買が成立した数、発売戸数は売り出された数です。中古市場には既存の全ストックが供給源としてあり、新築は年間の新規供給に限られます。母数が違う以上、優劣を直接比べる指標ではありません。
2.レインズ自身が集計上の注記を出しています。東日本レインズは、2025年1月以降に成約登録適正化を図るためのシステム改修を行っており、成約件数に影響を与えている可能性があると明記しています。前年比31.9%増という伸びを、そのまま需要の急増と受け取らないほうが安全です。
3.首都圏(1都3県)の数字です。全国の傾向とは異なりますし、同じ首都圏でも都県・エリアによって動きは大きく違います。
なぜ新築が減り、中古に目が向くのか
背景として大きいのは新築価格の水準です。2025年の首都圏の新築分譲マンションは、戸当たり平均で9,182万円、㎡単価139.2万円。東京23区に限れば平均1億3,613万円に達しています。
建設費の高騰と用地不足によって供給そのものが絞られ、限られた供給が高価格帯に寄っていく。その結果、実際に住まいを探す層の現実的な選択肢が中古へ移っている、という構図です。
中古側も価格は上がっており、成約㎡単価は82.98万円で13年連続の上昇となっています。ただし新築との価格差は依然として大きく、「同じ立地・同じ広さなら中古」という判断が働きやすい状況が続いています。
売主にとって、この数字が意味すること
売却を検討している立場からは、次のように受け止めるのが実際的です。
買い手の比較対象が中古中心になっています。かつては「新築か中古か」で迷う買主が多くいましたが、価格差が開いたことで、はじめから中古で探す層が厚くなりました。あなたの物件の競合は、近隣の新築ではなく同じエリアの似た条件の中古物件です。売り出し価格を考えるときは、まず近隣の中古の成約事例を見るべきです。
ただし「価格が13年上がり続けている=いま売れば高い」ではありません。上昇はエリア・築年・駅距離によって大きく差が出ており、平均値が上がっていても個別の物件が同じように上がっているとは限りません。統計は市場全体の空気を知る材料であって、あなたの物件の査定額ではないという点は、はっきりさせておきたいところです。
住み替えを伴う場合は、売りと買いを同じ市場で行うことになります。高く売れる環境は、次に買う物件も高い環境です。売却益だけでなく、住み替え後の総支出で判断してください。
実際に動くなら、まずは近隣の成約事例で相場観をつかみ、複数の不動産会社に査定を依頼して、査定額の根拠(どの事例をどう評価したか)を比べることをおすすめします。
よくある質問
Q. 中古の成約件数が新築の供給を上回るのは、いつからの傾向ですか?
A. 2016年の集計で中古マンションの成約件数が新築の供給量を初めて上回ったと報じられ、その後も差は開いています。2025年時点では中古が新築のおよそ2.2倍の規模です。
Q. 自分のマンションの相場は、どこで調べられますか?
A. レインズが一般向けに公開している「レインズ・マーケット・インフォメーション」で、実際の成約価格を条件を絞って調べられます。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」でも取引価格情報や地価を確認できます。いずれも無料です。
Q. 新築の価格高騰は、中古の価格も押し上げますか?
A. 一般に新築価格の上昇は中古の相対的な割安感につながりますが、中古価格がどこまで追随するかは立地・築年・管理状態によって異なり、一律には言えません。ご自身の物件については個別の査定でご確認ください。
Q. 発売戸数が減っているのは、市場が縮小しているということですか?
A. 新築の発売戸数の減少は、需要の消失というより供給側の事情(用地不足・建設費高騰)による面が大きいと説明されています。一方で中古の成約は増えており、取引そのものが減っているわけではありません。
Q. 統計の最新版はどこで見られますか?
A. 中古は東日本不動産流通機構(レインズ)、新築は不動産経済研究所がそれぞれ公表しています。数値は毎年更新されるため、最新のデータは各機関の公式発表でご確認ください。
市場の構造は、2016年に語られていた「中古が新築を上回るかもしれない」という段階を過ぎ、中古が主戦場である状態が定着しました。売主として大切なのは、この流れを追い風と捉えつつ、市場平均ではなく自分の物件の条件で判断することです。








