中古マンションの売り時と高く売るコツ|費用・税金の特例まで解説
2026年7月9日

新築マンションの価格高騰を背景に、中古マンション市場は活況が続いています。売主にとっては売却益を得やすい局面ですが、「いつ・いくらで・どう売るか」で最終的な手取りは大きく変わります。この記事では、マンション売却の実務に長く携わってきた立場から、少しでも損をせずに売るための基本と、売却時に使える税金の特例までをやさしく整理します。
いま中古マンションは「売り手市場」なのか
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の月例速報によると、2025年11月時点で首都圏の中古マンションの成約㎡単価は82.22万円(前年同月比+3.5%)と、67カ月連続で上昇しています。平均成約価格は5,204万円で、在庫件数は前年より減少傾向にあり、需給が引き締まった状態が続いています(出典:東日本レインズ)。
ただし、価格は都心と郊外で二極化しており、平均値の上昇がそのまま「どの物件でも高く売れる」ことを意味するわけではありません。相場は時期・エリア・築年数・面積帯で動くため、売り出す前に最新の成約事例で自分の物件の相場を確認することが第一歩です。相場が上昇局面にあるうちは売主に有利な条件で交渉しやすい一方、「今売らないと損」といった煽りに乗る必要はありません。ご自身の住み替え計画や資金計画に照らして冷静に判断しましょう。
マンションを少しでも高く売る3つの基本
1. 適正価格を知る
東京カンテイの調査では、首都圏の中古マンションを売り出してから1カ月以内に成約した場合の値下がりは売り出し価格に対し平均3%程度にとどまる一方、1カ月を超えて半年以内になると値下がり幅が大きくなる傾向が示されてきました。強気すぎる価格設定は販売期間を長引かせ、結局は値下げにつながりやすいため、適正価格での売り出しが重要です。
相場を知るには、複数の仲介会社に一括査定を依頼して価格帯の目安をつかむ方法が便利です。あわせて、東日本レインズが公表する「Market Watch」や、近隣・同じマンションの成約事例を仲介会社に調べてもらうと、より確度の高い水準がわかります。
2. 媒介契約の種類を理解して選ぶ
仲介会社と結ぶ媒介契約には、専属専任媒介・専任媒介・一般媒介の3種類があります。依頼できる会社数や、レインズへの登録義務・売主への報告義務などが異なります。
| 契約の種類 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 依頼できるのは1社のみ。自分で見つけた買主との直接取引もできない。レインズ登録は契約から5営業日以内、売主への報告は1週間に1回以上と、義務が最も手厚い。 | 1社に任せてこまめに動いてほしい人 |
| 専任媒介 | 依頼できるのは1社のみだが、自分で見つけた買主とは直接取引できる。レインズ登録は7営業日以内、報告は2週間に1回以上。 | 1社に任せつつ自己発見取引の余地も残したい人 |
| 一般媒介 | 複数社に同時に依頼できる。レインズ登録・報告の義務は課されない。 | 大手・地場・ネットなど強みの違う複数社に幅広く売り出したい人 |
3. 内見の印象を高める
汚れが目立つ部屋は購入検討者の意欲を下げます。特にキッチンや浴室など水回りのクリーニングは効果的です。近年は、家具や小物を配置して生活イメージを演出する「ホームステージング」を利用する売主も増えています。
売却にかかる費用と「手取り」の考え方
売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。主な費用を差し引いた「手取り(売却額−費用−税金)」で損得を判断しましょう。
| 費用項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円+消費税(売買価格400万円超の場合の上限) | 売却費用のなかで最も大きい |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付(契約金額により変動) | 契約書1通ごとに必要(電子契約なら不要) |
| 抵当権抹消費用 | 登録免許税(不動産1個につき1,000円)+司法書士報酬 | 住宅ローン残債がある場合 |
| 譲渡所得税・住民税 | 売却益が出た場合に課税 | 特別控除で0円になるケースも多い |
なかでも仲介手数料は金額が大きいため、手取り計算では必ず織り込みましょう。上限額は上表のとおりで、実際の料率は仲介会社との契約で決まります。
売却益が出たときの税金と特例
マンションを売って利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に所得税・住民税がかかります。譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で計算し、税率は売却した年の1月1日時点の所有期間で変わります。
- 所有5年以下(短期譲渡所得)…39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
- 所有5年超(長期譲渡所得)…20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
マイホームの売却には、税負担を大きく軽減できる特例があります(2026年7月時点。適用条件や期限は改正されることがあるため、最新の内容は国税庁の公式サイトで必ずご確認ください)。
3,000万円の特別控除
マイホームを売ったときは、所有期間の長短にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(国税庁 No.3302)。売却益が3,000万円以内であれば税金がかからないケースも多くあります。ただし、売った年の前年・前々年にこの特例やマイホーム譲渡損失の特例を受けている場合は適用できません。
10年超所有の軽減税率
所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合、3,000万円控除後の課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は税率が14.21%に軽減されます(国税庁 No.3305)。3,000万円特別控除と併用できます。
買い換え特例(課税の繰り延べ)
居住期間10年以上・所有期間10年超のマイホームを、より高い価格の住宅に買い換える場合、譲渡益への課税を将来に繰り延べられる「特定の居住用財産の買換えの特例」があります(国税庁 No.3355。適用期限は令和9年〈2027年〉12月31日まで、売却代金1億円以下などの要件があります)。ただし税金が非課税になるわけではなく、買い換えた家を将来売るときにまとめて課税される点に注意が必要です。3,000万円特別控除との併用はできないため、どちらが有利かを事前に試算しましょう。
また、住み替えで新居を住宅ローンを使って購入する場合、3,000万円特別控除(や買い換え特例)と住宅ローン控除は併用できません。入居した年とその前後の一定期間にこれらの譲渡特例を使うと住宅ローン控除が受けられないため、どちらが得かをシミュレーションして選ぶことが大切です。
売却損が出たときの特例
購入時より安く売れて譲渡損失が出た場合でも、一定の要件を満たせば給与所得などと損益通算し、その年に控除しきれない分を翌年以降3年間繰り越せる特例があります(マイホームを買い換える場合/住宅ローン残高が残る売り切りの場合。いずれも適用期限は令和9年〈2027年〉12月31日まで)。損が出そうなときこそ、確定申告で取り戻せる税金がないかを確認しましょう。
住宅ローンが残っているマンションを売るとき
住宅ローンの残債があるマンションでも売却は可能ですが、引き渡し時に抵当権を抹消する(=残債を完済する)必要があります。売却価格が残債を上回る「アンダーローン」であれば売却代金で完済できますが、下回る「オーバーローン」の場合は、不足分に自己資金を充てるか、住み替え先の購入資金と残債をまとめて借りる住み替えローンなどの選択肢を検討します。金融機関によって取り扱いや条件が異なるため、住み替えローンや残債の借り換えを利用する場合は、各金融機関の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
よくある質問(マンション売却)
Q. 売り出しから成約まで、どのくらいの期間がかかりますか?
物件やエリア、価格設定によりますが、一般には数カ月かかることが多いです。適正価格での売り出しは、成約までの期間を短くし、値下げを避けるうえでも有効です。
Q. 査定は有料ですか?
仲介会社による売却査定は通常無料です。まずは複数社の査定を受けて価格帯の目安をつかむとよいでしょう。
Q. 売却したら確定申告は必要ですか?
譲渡益が出た場合はもちろん、3,000万円特別控除や譲渡損失の特例を使う場合も確定申告が必要です。特例は申告しなければ適用されないため、忘れず手続きしましょう。
まとめ
中古マンションの相場は高値圏が続いていますが、手取りを最大化できるかは「適正価格での売り出し・媒介契約の選択・費用と税金の把握」で決まります。特例は要件と期限が細かいため、売却前に最新情報を国税庁などの公式で確認し、必要に応じて税理士やファイナンシャルプランナーに相談すると安心です。








