
日本の離婚件数は、厚生労働省の人口動態統計によると2024年で18万5,895組。ピークだった2002年(28万9,836組)からは減少傾向にあるものの、依然として
年間18万組を超える夫婦が離婚しています。そして離婚のときに問題になりがちなのが、住宅ローンが残るマイホームの扱いです。
これまで二人で協力して返済してきた住宅ローンも、離婚となれば話は別です。名義や返済をあいまいにしたまま別れると財産分与の話がこじれやすく、
不動産を売却して住宅ローンの残債を清算したうえで財産分与するのは、離婚時によく取られる方法です。本記事では、売却してもローンを完済できない場合の「任意売却」を中心に、実務上の注意点を解説します。
離婚時の家は「売って清算」が基本線。残債と売却額の関係をまず確認
最初に確認すべきは、
住宅ローンの残債と、いま売ったらいくらになるか(査定額)の大小関係です。
- 査定額 > 残債(アンダーローン):通常の売却でローンを完済でき、残ったお金を財産分与の対象にできます。もっともシンプルに清算できる形です。
- 査定額 < 残債(オーバーローン):売却代金だけではローンを返しきれません。不足分を預貯金などで補えない場合に検討するのが「任意売却」です。
マイホームを手放す予定がない場合でも、不動産の権利関係(名義・連帯保証など)はトラブルのもとになりやすいため、
離婚協議の前に登記と借入の状況を必ず確認しておきましょう。
任意売却とは?競売との違い
任意売却とは、不動産を売却しても住宅ローンを完済できない場合に、
債権者(銀行など)の同意を得て抵当権を抹消してもらい、市場で売却する方法です。債務者と債権者の間に不動産業者が調整役として入り、競売によらず価格を調整して売却を成立させます。フラット35などを扱う住宅金融支援機構も、返済の継続が困難になった場合の選択肢として任意売却の手続きを設けています。
| 比較の観点 | 任意売却 | 競売 |
| 売却価格 | 市場価格に近い水準を目指せる | 市場価格より安くなりやすい |
| 手続きの主体 | 所有者の意思で進める(債権者の同意が必要) | 裁判所による強制的な手続き |
| 引き渡し時期 | 調整の余地があり生活設計を立てやすい | 調整の余地がほとんどない |
| 残った債務 | 返済義務は残る(返済方法は債権者と協議) | 返済義務は残る |
注意したいのは、任意売却をしても
売却後に残った債務の返済義務はなくならないことです。返済額・返済方法は債権者との話し合いで取り決めます。また、任意売却はローンの返済が困難になった局面で使われる手法のため、
返済の延滞を伴う場合は信用情報機関に延滞の事実が登録され、その後のクレジットカードやローンの利用に影響が出る可能性があります。この点も理解したうえで判断してください。
離婚にともなう売却・任意売却の注意点
①連帯債務・連帯保証は、離婚しても自動的には外れない
夫婦で連帯債務を組んでいたり、一方が連帯保証人になっていたりする場合、
離婚してもその立場は当然には解消されません。外すには金融機関の承諾(借り換えや保証人の変更など)が必要です。「元配偶者がローンを滞納したら自分に請求が来た」という事態を避けるためにも、売却して清算するか、残す場合は金融機関を交えて取り決めをしておきましょう。
②滞納する前に、早めに相談する
任意売却は債権者の同意があって初めて成立します。返済が苦しくなりそうな段階で
早めに借入先の金融機関へ相談したほうが、選択肢を残しやすくなります。
③財産分与と税金:不動産を「渡す側」に譲渡所得税がかかることがある
財産分与を土地や建物で行った場合、
分与した側に譲渡所得の課税が行われることがあります(分与時の時価が収入金額とみなされます)。一方、マイホームの売却益には最高3,000万円の特別控除(居住用財産の3,000万円特別控除)がありますが、
配偶者への譲渡には適用されないため、財産分与で自宅を渡す場合は離婚成立後に行うことで適用を受けられる可能性があります。適用条件は個別の事情で変わるため、
最新の情報は国税庁サイトや税理士にご確認ください。
よくある質問
Q. 妻子が家に住み続け、夫がローンを払い続ける形にはできますか?
A. 可能ではありますが、実務上はリスクの大きい形です。支払う側の返済が滞れば家を失うおそれがあり、名義人と居住者が異なることでトラブルも起きやすくなります。この形を選ぶ場合は、養育費や住宅費の負担とあわせて
公正証書などで取り決めを書面化しておくことを強くお勧めします。
Q. オーバーローンの家は、財産分与ではどう扱われますか?
A. 一般に、財産分与は夫婦のプラスの財産を分ける制度であり、
ローン残債が資産価値を上回る不動産は分与すべきプラスの財産がないと評価されるのが通常です。だからこそ、任意売却などで債務を整理してから離婚を成立させたほうが、後々の関係を清算しやすくなります。個別の判断は弁護士など専門家にご相談ください。
まとめ
離婚時の不動産は、
「残債と査定額の大小」を確認したうえで、売却して清算するのが後腐れのない基本線です。オーバーローンなら任意売却という選択肢がありますが、残債務の返済義務や信用情報への影響も踏まえて判断する必要があります。まずは自宅がいくらで売れるのかを把握するため、複数の不動産会社に査定を依頼して相場を確認するところから始めましょう。