一戸建てを売却した場合、売却金額が購入金額より高いケースまたは安いケースのいずれの場合も確定申告が必要になります。いくつかのケースを確認していきます。
(一戸建てが購入時よりも高く売れたケース)
このケースで、課税譲渡所得がプラスになる場合、所得税と住民税がかかります。課税譲
所得は、以下のように計算します。
課税譲渡所得= 売却金額- (取得費+譲渡費用)-3,000万円の特別控除
以下、事例を確認していきます。
例1、売却金額が購入金額を上回る場合
平成15年6月1日購入、購入金額3,000万円(土地部分1,000万円、建物部分2,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額5,700万円
取得費と減価の額
取得費の計算は、一戸建ての場合と同様です。
種別 | 法定耐用年数(事業建物の場合) | 償却率(事業建物の場合) | 法定耐用年数(非事業建物の場合) | 償却率(非事業建物の場合) |
---|---|---|---|---|
木造 | 22年 | 0.046 | 33年 | 0.031 |
木造モルタル造 | 20年 | 0.05 | 30年 | 0.034 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 | 70年 | 0.015 |
一戸建ての場合、木造の耐用年数は33年で、償却率は0.031を適用します。経過年数は平成15年6月1日から平成26年8月1日で11年と2か月で11年になります。(経過年数の1年に満たない6か月未満の場合は切り捨て、6か月以上は切り上げで1年となります。)
よって、減価の額は 2,000万円×0.9×0.031×11年=6,138,000円です。
したがって、取得費は、1,000万円+(2,000万円-6,138,000円)=23,862,000円になります。
譲渡費用
一戸建て売却時にかかる不動産屋への仲介手数料は、
一戸建て売却金額5,700万円×3.24%+64,800円=1,911,600円
また、譲渡するための印紙代は4万5千円とします。
したがって、譲渡費用は、1,911,600円+45,000円=1,956,600円になります。
課税長期譲渡所得
このケースは、所有期間が5年超のため、長期譲渡所得となります。
3,000万円の特別控除を適用し、課税譲渡所得は以下のようになります。
5,700万円-(23,862,000円+1,956,600円)-3,000万円=1,181,400円
よって、課税譲渡所得がプラスになり、所得税と住民税がかかります。
税金
長期譲渡所得(所有期間10年超のため)の軽減税率を適用して、税金を計算すると
以下のようになります。
- 所得税 1,181,400 円×10.21%= 120,620円
- 住民税 1,181,400 円× 4% = 47,256円
したがって、120,620円+47,256円=167,876円になります。
(一戸建てが購入時よりも高く売れて、かつ買い換えた一戸建ての購入金額が売却金額より高いケース)
このケースは、(1)と同様に3,000万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率の併用か、特定居住用財産の買換えの特例の適用の選択適用により、税金を計算します。
以下、事例を確認していきます。
例2、売却金を用いた一括払いによる買い換えが発生する場合
平成15年6月1日購入、購入金額3,000万円(土地部分1,000万円、建物部分2,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額 5,700万円
平成26年12月1日買い換え、購入金額 6,000万円
- 例1と同様に、3,000万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率を併用すると、所得税+住民税=167,876円になります。
-
特定居住用財産の買換えの特例の適用
購入金額 6,000万円>売却金額 5,700万円のため、譲渡はなかったものとみなされ、税金はゼロとなります。
したがって、この場合は、特定居住用財産の買換えの特例の適用をしたほうが、①の場合より、有利となります。
(一戸建ての売却金額が購入時の金額よりも安くなって譲渡損失が出て、かつ買換えた一戸建てのローンがあるケース)
このケースは、他の所得と損益通算する特例および翌年以降3年以内の各年度の総所
金額等からの繰越控除の適用があります。
以下、事例を確認していきます。
例3、住宅ローンによる買い換えが発生する場合
平成15年6月1日購入、購入金額3,000万円(土地部分1,000万円、建物部分2,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額1,700万円
平成26年12月1日買い換え 購入金額3,000万円(住宅ローン20年)
給与所得 350万円
取得費
(1)と同様で、23,862,000円になります。
譲渡費用
不動産屋への仲介手数料 1,700万円×3.24%+64,800円=615,600円
印紙代1万円とします。
したがって、譲渡費用は615,600円+1万円=625,600円となります。
譲渡損失
譲渡損失を計算すると以下のようになります。
1,700万円-(23,862,000円+625,600円)=△7,487,600円
繰越控除
- 譲渡した年(平成26年)給与所得と譲渡損失を損益通算します。350万円-7,487,600円=△3,987,600円(2年目へ繰越)
- 2年目(平成27年)350万円-3,987,600円=△487,600円(3年目へ繰越)
- 3年目(平成28年)350万円-487,600円=3,012,400円(繰越なし)
(一戸建ての売却金額が購入時の金額よりも安くなって譲渡損失が出て、かつ購入時のローン残高が売却金額を上回る場合)
このケースは、譲渡損失のうち、住宅ローン残高を超える場合の差額を限度として、その年の損益通算及びその年の翌年以降3年間の各年度の所得金額等から繰越控除の適用があります。
以下、事例を確認していきます。
例4、売却金額が購入金額(および住宅ローン残高)に達しない場合
平成15年6月1日購入、購入金額3,000万円(土地部分1,000万円、建物部分2,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額1,700万円
(売却契約前日の時点で、住宅ローン残高あり、残高2,500万円)
給与所得 350万円
譲渡損失
例3と同様で△7,487,600円
住宅ローン残高-売却価額
2,500万円-1,700万円=800万円
損益通算できる金額
7,487,600円(7,487,600円<800万円)
損益通算
- 譲渡した年(平成26年)
給与所得と譲渡損失を損益通算します。
350万円-7,487,600円=△3,987,600円(2年目へ繰越) - 2年目(平成27年)350万円-3,987,600円=△487,600円(3年目へ繰越)
- 3年目(平成28年)350万円-487,600円=3,012,400円(繰越なし)