一物四価とは?公示地価・基準地価・路線価・固定資産税評価額の違い
2026年7月30日

土地の価格には、公的に発表されているものだけで4つの種類があります。「一物四価(いちぶつしか)」と呼ばれるもので、マンションや戸建ての売却を考えるときに、どれを見ればよいのか分かりにくいところです。
実際、査定を受けたときに「路線価より安いのでは?」と感じたり、相続した物件で「固定資産税評価額で売ればいいのか」と迷ったりする方は少なくありません。4つはそれぞれ目的が違い、水準も違います。この記事では、それぞれの中身と、売却の場面ごとの使い分けを整理します。
土地の4つの公的価格を一覧で比べる
| 名称 | 調査・決定するところ | 基準日と公表時期 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 地価公示(公示地価) | 国土交通省 土地鑑定委員会 | 毎年1月1日時点/3月に公表 | 土地取引の指標、公共用地の取得価格の算定 |
| 都道府県地価調査(基準地価) | 各都道府県 | 毎年7月1日時点/9月に公表 | 地価公示を補完する指標 |
| 相続税路線価 | 国税庁 | 毎年1月1日が評価時点/7月1日に公開 | 相続税・贈与税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 市町村(東京23区は東京都) | 賦課期日は1月1日/3年ごとに評価替え | 固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税の計算 |
それぞれの中身
地価公示(公示地価)|取引の基準になる価格
地価公示法にもとづき、国土交通省の土地鑑定委員会が、毎年1月1日時点における標準地の1㎡当たりの正常な価格を判定して公示するものです。全国約26,000地点の標準地が対象で、毎年3月に公表されます。
4つの中でもっとも時価(実勢価格)に近い水準とされ、他の3つの価格を決めるときの基礎にもなります。売却を考えるときに「そのエリアの地価がどう動いているか」を見るなら、まずここです。
都道府県地価調査(基準地価)|半年ずれた定点観測
国土利用計画法施行令にもとづき、各都道府県が毎年7月1日時点の基準地の正常価格を判定するものです。都道府県の発表に合わせて、国土交通省が全国の状況をとりまとめて公表しています。令和7年(2025年)の調査では、基準地は21,441地点でした。
地価公示が1月1日時点であるのに対し、こちらは7月1日時点。半年ずらして地価を追えるのがこの調査の役割です。地価公示と共通の地点も設定されており、年の前半・後半の動きを分けて見ることができます。
相続税路線価|公示価格の80%程度が目安
相続税や贈与税で土地の価額を計算するために、国税庁が道路(路線)ごとに定める1㎡当たりの価額です。評価時点は毎年1月1日で、その年の7月1日に公開されます。
国税庁は路線価等について、「地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めている」と明示しています。相続税の申告は評価時点から時間が経ってから行われることが多く、その間の地価変動を吸収するための安全率と理解しておくとよいでしょう。
なお、路線価が定められていない地域(倍率地域)では、固定資産税評価額に評価倍率を掛ける「倍率方式」で評価します。都市部以外では、こちらの地域も少なくありません。
固定資産税評価額|公示価格の70%程度が目安
固定資産税・都市計画税などの課税標準となる価格で、市町村(東京23区は東京都)が総務大臣の定める固定資産評価基準にもとづいて決定します。総務省は宅地の評価について、「地価公示価格等の7割を目途に評価」していると説明しています(平成6年度の評価替えから導入)。
大きな特徴は3年ごとにしか評価替えが行われないことです。そのため、地価が動いている時期には、公示地価や実勢価格との差が開きやすくなります。
この評価額は、固定資産税だけでなく登録免許税・不動産取得税の計算にも使われます。売却時の諸費用を見積もるうえでも確認しておきたい数字です。ご自身の物件の評価額は、毎年春に届く納税通知書に添付された課税明細書で確認できます。
実勢価格との関係|水準のイメージ
地価公示の価格を100としたとき、相続税路線価はおよそ80、固定資産税評価額はおよそ70。これが公表されている目安です。

注意したいのは、実際に売買が成立する価格(実勢価格)は、これらとは別物だという点です。実勢価格は買主との交渉や物件個別の条件で決まるため、公示地価より高いことも安いこともあります。需要が集中するエリアでは公示地価を大きく上回ることもあれば、条件の悪い土地では下回ることもあります。
「路線価÷0.8」で売却価格が分かるといった逆算をよく見かけますが、これはあくまで机上の目安です。マンションの場合は建物部分の価値や管理状態、階数・向きなどの要素が価格の大部分を占めるため、土地の公的価格から売却価格を導くことはできません。売り出し価格の検討には、必ず近隣の成約事例を使ってください。
売却の場面別・どれを見ればよいか
売り出し価格を考えるときは、地価公示・都道府県地価調査でエリアの地価動向をつかみつつ、実際の判断材料は成約事例と査定額に置きます。公的価格は「相場の方向感」を知るための背景情報です。
相続した物件を売るときは、相続税路線価が相続税評価の基礎になります。相続税を納めた場合、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却すれば、納めた相続税額のうち一定額を取得費に加算できる特例があります(取得費加算の特例)。適用要件は国税庁の案内でご確認ください。
諸費用を見積もるときは、固定資産税評価額を使います。所有権移転登記にかかる登録免許税や、買主が負担する不動産取得税の課税標準になるためです。
固定資産税を精算するときは、課税明細書の実額を使います。納税義務者は1月1日時点の所有者と決まっているため、年の途中で引き渡す場合は売主が納付したうえで買主と日割り精算するのが一般的です。起算日を1月1日とするか4月1日とするかは地域慣行で異なるため、売買契約書での取り決めを確認してください。
調べ方
- 地価公示・都道府県地価調査…国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で地点を検索できます。取引価格情報もあわせて確認できます。
- 相続税路線価…国税庁の路線価図・評価倍率表(https://www.rosenka.nta.go.jp)で閲覧できます。平成30年分から令和8年分までが掲載されています。
- 固定資産税評価額…毎年春に届く納税通知書に添付の課税明細書、または市区町村の窓口で取得できる固定資産評価証明書で確認します。
- 実際の成約価格…レインズが一般向けに公開している「レインズ・マーケット・インフォメーション」で、成約価格を条件を絞って調べられます。
2026年時点の最新状況
国土交通省が2026年3月18日に公表した令和8年地価公示(2026年1月1日時点)では、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇しました。全用途平均と商業地は上昇幅が拡大した一方、住宅地は前年と同じ上昇幅となっています。
相続税路線価は、令和8年分が2026年7月1日に公開されています。
固定資産税評価額は3年ごとの評価替えで、現行の負担調整措置は令和6年度から令和8年度までの期間に対応しています。いずれも毎年(あるいは3年ごとに)更新されるため、最新の数値は国土交通省・国税庁・お住まいの市区町村の公式情報でご確認ください。
よくある質問
Q. 4つのうち、売却価格にいちばん近いのはどれですか?
A. 地価公示(公示地価)です。ただしこれは土地の価格であり、実際の売買価格は個別の条件で決まります。マンションの場合は建物・管理・立地の要素が大きいため、公示地価から売却価格を計算することはできません。
Q. 路線価を0.8で割れば、だいたいの売却価格が分かりますか?
A. その計算で得られるのは地価公示価格の水準の目安であって、売却価格ではありません。エリアや物件によって実勢価格との差は大きく開きます。売却価格の目安は成約事例と査定で確認してください。
Q. 固定資産税評価額が実感より低いのはなぜですか?
A. 宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価されており、さらに3年ごとにしか評価替えが行われないためです。地価が上昇している時期ほど、実勢価格との差は開きやすくなります。
Q. マンションにも路線価は関係しますか?
A. 関係します。マンションの敷地部分(敷地利用権)の相続税評価は、路線価などで求めた敷地全体の価額に敷地権の割合を掛けて計算するのが基本です。なお2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した分譲マンションには、区分所有補正率による新しい評価方法が適用されています。
Q. 公示地価と基準地価はどちらを見ればよいですか?
A. 両方を時系列で見るのがおすすめです。1月1日時点の地価公示と7月1日時点の地価調査を並べることで、半年ごとの動きが追えます。共通地点も設定されているため、前半・後半に分けた変動率を確認できます。
4つの価格は、どれが正しいというものではなく、それぞれ別の目的のために作られた別の物差しです。売却の場面では「相場の方向感は地価公示、税金の計算は路線価と固定資産税評価額、売り出し価格は成約事例」と役割を分けて使うと、判断がぶれません。まずはお手元の課税明細書と、近隣の成約事例を確認するところから始めてみてください。








