マンション売却の確定申告・譲渡所得税をやさしく解説

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共有名義のマンションを売る|同意が要る人と不明者への手続

2026年8月31日

共有名義のマンションの売却を家族で話し合うイメージ

共有名義のマンションを売ろうとすると、価格の話に入る前に必ず一度止まります。「持分の過半数があれば売れるのか」「連絡の取れない兄弟がいる」「自分の分だけ先に売ってしまいたい」——査定を頼む前に決着させておくべき論点が、所有権の側に残っているからです。

2023年(令和5年)4月1日に施行された民法改正で、共有物のルールはかなり変わりました。ただし「売却に全員の同意が要る」という原則そのものは動いていません。変わったのは、その周辺——決められない共有者がいるときの逃げ道と、分割のときの順序です。ここを取り違えたまま動くと、時間だけが過ぎて手取りが減ります。この記事では、売主が実際に手を動かす順に整理します。

最初の作業は、登記事項証明書で「誰が何分のいくつ」を確定すること

共有の相談で最初に食い違うのが、持分の割合です。「たしか半分ずつのはず」という記憶と登記が一致しないことは珍しくありません。住宅ローンの負担割合と登記上の持分がずれたまま何年も経っている、相続を経て持分が細かく割れている、といったケースです。法務局で登記事項証明書を取り、共有者の氏名・住所・持分の分数を、まず紙の上で確定させてください

持分の割合は、売却代金の分け方の初期値になる

売買代金は、原則としてこの持分割合に応じて各共有者が受け取ります。譲渡所得の申告も、持分に応じて一人ひとりが行います。持分と違う配分にしたい事情がある場合は、贈与として扱われる可能性があるため、契約前に税務署または税理士へ確認しておくのが安全です。「あとで精算すればいい」は、税金の面では通用しないことがあります。

相続登記が終わっていない持分は、別の土俵に乗っている

登記名義が亡くなった方のままなら、その不動産は遺産共有の状態です。通常の共有とは適用されるルールが一部異なり、後述する裁判手続きの使える・使えないもここで分かれます。加えて、相続登記の申請は2024年4月1日から義務化されており、それ以前に発生した相続にも2027年3月31日という期限がかかります。売却の前提としても登記は必要になるため、共有の整理と並行して進めてください(詳しくは相続登記の義務化とマンション売却|2027年3月31日の期限で解説しています)。

売却は「変更」に当たる——過半数で決められるのは、その手前まで

2023年の改正で、共有物についてできることの線引きが条文で整理されました。法務省の資料では次のように整理されています。

行為の種類必要な同意マンションでの例
変更(軽微でないもの)
民法251条1項
共有者全員の同意第三者への売却、抵当権の設定、大規模なリフォーム
軽微な変更・管理
民法251条1項・252条1項
持分の過半数3年以内の定期建物賃貸借、使用する共有者の決定
保存
民法252条5項
共有者が単独で可雨漏りなど緊急の補修、不法占拠者への明渡し請求

改正で「形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)」が過半数で決められるようになり、建物の賃借権も3年以内なら過半数で設定できるようになりました。しかし売却は「変更」の側に残っています。持分を3分の2持っていても、残り3分の1の共有者を外して売買契約を結ぶことはできません。買主に所有権全部を移すには、持分を持つ全員が売主として契約する必要があります。

一人が住み続けている場合、その使用料は話し合いの対象になる

改正で明文化された点として、共有物を使っている共有者は、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法249条2項)。ただし、共有者間で無償とする合意があればそれに従います。相続したマンションに兄弟の一人が住み続けているケースでは、売却の話と並行してこの精算が争点になりがちです。売り出しの前に、過去分をどう扱うかを書面で決めておくと、決済の直前で止まる事態を避けられます。

自分の持分だけを売ることはできる。ただし手取りは落ちる

持分の処分は各共有者が単独でできます。実際、共有持分の買取をうたう業者からの連絡をきっかけに相談に来られる方もいます。ここで押さえておきたいのは、法務省自身が「不動産の共有持分を売却して得る代金よりも、不動産全体を売却して持分に応じて受け取る代金の方が高額になりやすい」と説明している点です(民法改正の解説資料)。

理由は単純で、持分だけを買った第三者は、そのマンションに住むことも自由に貸すこともできないからです。買い手にとって使い道が限られるぶん、価格は下がります。そして持分を取得した第三者は、他の共有者に対して共有物分割を請求できます。目の前の現金と引き換えに、残った家族が見知らぬ第三者と分割の話し合いをする状態を作ってしまう——これが持分売却の実質的なコストです。急いで現金化する必要が本当にあるのか、全体売却との手取り差を確かめてから判断してください。

連絡が取れない共有者がいるとき、2023年から使えるようになった2つの手続き

必要な調査を尽くしても氏名や所在が分からない共有者(所在等不明共有者)がいる場合、改正民法は裁判所の決定を経る2つの制度を用意しました。どちらも申立先は不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。

比較の観点持分取得(民法262条の2)譲渡権限の付与(民法262条の3)
できること不明な共有者の持分を、申立てをした共有者が取得する不明な共有者の持分を含めて、不動産全体を第三者へ譲渡する
お金の準備時価相当額を供託時価相当額を持分に応じて按分した額を供託
公告の期間3か月以上の異議届出期間3か月以上の異議届出期間
条件裁判の確定時に持分を取得他の共有者全員が持分の全部を譲渡することが停止条件
期限裁判の効力発生から原則2か月以内に譲渡行為が必要
遺産共有の場合相続開始から10年を経過しなければ利用できない

売却を目的とするなら、後者の譲渡権限付与が本命です。持分をいったん自分に移してから売るより手間が少なく、不明な共有者の持分は買主へ直接移転します。ただし停止条件が付いている点に注意が必要です。他の共有者が一人でも持分の譲渡を拒めば条件が成就せず、譲渡はできません。「行方不明の人がいても裁判所に頼めば売れる」と単純化した説明を見かけますが、実際には不明者以外の全員がすでに売却で一致していることが前提です。

また、この制度は不明な共有者が持分を失う結果になる行為に使うものなので、抵当権の設定などには利用できません。所在等不明を理由に共有物の変更・管理を決める別の手続き(民法251条2項・252条2項)とは、目的も期間も異なります。

マンションでは使えない制度がある——2026年4月に埋まった穴

ここがマンション特有の落とし穴です。所有者が分からない不動産には、裁判所が管理人を選ぶ所有者不明土地・建物管理制度という別ルートもあります。ところが区分所有建物には、この所有者不明建物管理制度は適用されません(区分所有法6条4項)。戸建てなら選べた手段が、マンションでは選べなかったわけです。

この穴は、2025年(令和7年)5月30日に公布された改正区分所有法(令和7年法律第47号)で埋まりました。2026年4月1日施行で、所有者不明専有部分管理制度が新設されています(改正区分所有法46条の2)。管理不全の専有部分・共用部分を対象とする管理制度も同時に創設されました。相続人が判明せず放置された住戸を抱えるマンションでは、管理組合側の選択肢が増えたことになります。

売主の立場で意味を持つのは、「所在不明の共有者がいるマンションは打つ手なし」という前提が、2026年4月から変わったという点です。実際にどの手続きを選ぶかは事案によるため、司法書士・弁護士に相談する際は、区分所有建物であることを最初に伝えてください。

話がまとまらないときの共有物分割は、いきなり競売ではない

共有者間で結論が出ないとき、最後の手段が共有物分割です。「裁判になったら競売で叩き売られる」と説明されることがありますが、2023年の改正で検討の順序が条文に書かれ、競売は後ろに回りました

賠償分割が明文化され、競売は補充的な位置づけになった

裁判所が採れる分割方法は、①現物分割、②賠償分割(共有者の一人が取得し、他の共有者へ代償金を支払う)、③競売分割の3つです。改正で②が民法258条2項に明記され、競売分割は「現物分割も賠償分割もできない場合」または「分割で価格を著しく減少させるおそれがある場合」に限られることが258条3項で明確になりました。マンションの一室は物理的に分けられないため、実務上は誰かが取得して代償金を払うか、全体を売って分けるかの二択に収れんします。裁判所が代償金の支払いなどの給付を命じられることも258条4項に明記されました。

相続開始から10年たつと、手続きが1本にまとまる

通常の共有持分と遺産共有持分が混在している場合、従来は共有物分割訴訟と遺産分割手続きを別々に進める必要がありました。改正後は、相続開始から10年を経過していれば、共有物分割訴訟で一元的に解消できます(民法258条の2)。ただし相続人が異議を申し出れば従来どおり別々になり、その申出は訴状の送達を受けた日から2か月以内という期限付きです。

この「10年」は分割の基準にも効きます。相続開始から10年を過ぎた遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく法定相続分が基準になります(民法904条の3)。施行日前に発生した相続にも適用されますが、少なくとも施行から5年の猶予があり、令和10年(2028年)3月31日の経過が一つの区切りになります。長く放置してきた共有ほど、この日付が判断に影響します。

手取りで見ると、3,000万円控除の効き方は共有者ごとに違う

売却の合意ができたら、次は税金です。マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、共有名義だと計算が変わります。国税庁は「特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用を受けられる共有者1人につき最高3,000万円」と明記しています。適用の可否は共有者ごとに判定し、確定申告も一人ひとりが提出します。

裏を返すと、控除を使えない共有者がいれば、その人の持分にはそのまま課税されます。よくあるのは次の2つです。

  • その住戸に住んでいない共有者——相続で持分だけ取得した兄弟姉妹などが該当します。以前住んでいた場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
  • 共有者どうしで持分を買い取る場合——親子や夫婦など「特別の関係がある人」への譲渡は、この特例の対象外です。生計を一にする親族、売った後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人も含まれます。

つまり「もめるくらいなら兄が妹の持分を買い取る」という解決は、税務上は不利になりやすいということです。第三者へ全体を売れば各自が控除を検討できたのに、身内間の売買にすると控除が使えない——手取りベースでは無視できない差になります。譲渡所得の計算そのものはマンション売却と確定申告|譲渡所得税の計算方法と特例にまとめています。なお、離婚に伴う共有の解消は財産分与の扱いが絡むため、離婚によるマンション売却|残債・名義・税金の3つの要点を先に読んでください。

※税額は取得費・所有期間・他の特例の適用状況で変わります。実際の申告にあたっては、国税庁の資料または税理士にご確認ください。

持分をめぐる相談で、実際に食い違うところ

共有者の一人が反対しています。持分の過半数で売ることはできませんか。

できません。売却は民法251条1項の「変更」に当たり、共有者全員の同意が必要です。過半数で決められるのは、管理と軽微な変更までです。反対の理由が価格や時期にあるなら、査定書を共有者全員に開示して同じ数字を見る状態を作るところから始めてください。理由が使用の継続にあるなら、賠償分割(住み続ける人が取得して代償金を払う)を先に検討したほうが早いことがあります。

私の持分だけ買い取ると業者から連絡がありました。売ってもよいものでしょうか。

売ること自体は単独でできます。ただし全体売却と比べて代金が下がりやすく、買い取った第三者は他の共有者に共有物分割を請求できます。他の共有者との関係を含めて考えるなら、まず全体売却で合意できないかを試し、それが無理な場合の選択肢と位置づけるのが順当です。

相続登記をしないまま、共有のマンションを売ることはできますか。

買主へ所有権を移す前提として、相続による名義の移転が必要です。相続登記の申請は2024年4月1日から義務化され、それ以前に発生した相続も2027年3月31日が期限とされています。売却の予定があるかどうかにかかわらず、先に済ませておくべき手続きです。

所在の分からない共有者がいます。手続きにはどれくらいかかりますか。

民法262条の2・262条の3のいずれも3か月以上の異議届出期間が法律上必要で、その前に登記簿・住民票などの調査と申立ての準備、時価相当額の供託があります。全体でどれくらいかかるかは調査の難易度や裁判所の運用によって変わるため、期間を断定できる性質のものではありません。売却の期限が決まっているなら、早い段階で弁護士・司法書士に相談してください。

共有者の一人が認知症で、判断が難しい状態です。

本人に代わって成年後見人が居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。裁判所は、許可を得ないでした処分は無効になると説明しています。現在は施設に入所していて住んでいない場合でも、以前住んでいた住戸や将来住む可能性のある住戸は「居住用」として扱われます。後見の申立てから許可まで時間がかかるため、売り出しのスケジュールはこの手続きを起点に組み立ててください。

共有の売却は、値段の前に「誰が決められるか」を片づける作業

共有名義のマンションでつまずくのは、たいてい相場観ではなく手続きの側です。①登記事項証明書で持分と名義を確定する、②通常共有か遺産共有かを分ける、③連絡の取れない共有者がいるかを確かめる。この3点が決まれば、使える手続きと、かかる時間の見当が付きます。

そのうえで、全体を売る・誰かが取得して代償金を払う・自分の持分だけ売るの3つを、手取り(売却額−費用−税金)で並べて比べてください。3,000万円控除が誰に効くかまで含めると、感覚とは違う順位になることがあります。制度は2023年と2026年の2度にわたって整備され、打てる手は確実に増えました。急いで持分を手放す前に、まずは全体で売る道が本当に閉じているのかを確かめることをおすすめします。

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