管理計画認定制度とマンション売却|認定は売主単独では取れない
2026年8月18日

中古マンションの査定で「管理を見られる」と言われるようになりました。その動きを制度にしたのが、2022年(令和4年)4月に始まった管理計画認定制度です。管理組合が作った管理計画を、市区(町村部は都道府県)が基準に照らして認定し、認定されたマンションは公的な一覧サイトや不動産ポータルに掲載されます。
ただし、売主の立場でこの制度に向き合うと、いちばん先に突き当たるのは「自分では申請できない」という壁です。この記事では、国土交通省の制度資料と認定基準、住宅金融支援機構の商品要件にあたって、売却を控えた区分所有者が実際に何を判断し、何を仲介会社に渡せばよいかに絞って整理します。似た名前の「マンション管理適正評価制度」との違いと、2027年4月に控える基準の見直しも合わせて扱います。
売却を決めてから認定を取りにいっても、まず間に合わない
最初に、期待をひとつ外しておきます。管理計画認定は、売主が売却のために取得できるものではありません。
申請できるのは管理組合の管理者等で、区分所有者ひとりでは動かせない
マンション管理適正化法第5条の3は、認定を申請できる者を「管理組合の管理者等」と定めています。理事長(管理者)や、外部管理者方式であればその管理者です。専有部分の所有者が個人の資格で申請する余地はありません。売却を急いでいるからといって、自分の住戸だけ先に認定を受ける、といった扱いも当然ありません。認定はマンション一棟(管理組合)に対して与えられるものだからです。
総会決議・事前確認・自治体審査という3段構え
手続きは国土交通省が示すとおり、おおむね次の順で進みます。
- 総会(集会)の決議……認定申請を行う旨を管理組合の総会で決議する。管理規約が標準管理規約に準拠していれば、出席組合員の過半数の賛成で決議できる
- 事前確認の申請……事前確認講習を修了したマンション管理士や、顧問のマンション管理士・管理会社・日本マンション管理士会連合会・マンション管理センターのいずれかに依頼する
- 事前確認適合証の発行……基準に適合していれば、公益財団法人マンション管理センターから交付される
- 自治体への認定申請と認定通知書の交付
この流れを見ればわかるとおり、律速になるのは総会です。通常総会が年1回しかない管理組合で、次の総会が半年先なら、そこから逆算するしかありません。しかも認定基準を満たしていない項目(たとえば長期修繕計画の見直しや修繕積立金の増額)があれば、その改定自体をもう一度総会にかける必要があります。売り出しから引き渡しまでが3〜6か月というマンション売却の時間軸には、まず乗りません。
つまり売主にとって、認定は「これから取るもの」ではなく、「すでにあるかどうかを確かめて、あるなら正しく使うもの」です。
その前に、自分のマンションが申請できる地域かを確認する
認定できるのは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進計画」を作成した市・特別区(市以外の町村部は都道府県)に限られます。推進計画がない自治体では、管理がどれだけ良好でも申請の窓口自体がありません。
この点は制度開始当初こそ大きな制約でしたが、対象はかなり広がりました。国土交通省の調査(2025年5月末時点)によれば、県庁所在地の市区・政令指定都市・特別区はすべて作成済みで、中核市も全市が作成の意向を示しています。総マンションストックに占める「認定制度の対象となるマンション」の割合は、次のように推移する見込みです。

2025年度末時点で98.7%という見込みですから、都市部の分譲マンションであれば、まず対象と考えて差し支えありません。ただし自治体が国の基準に独自基準を上乗せしている場合があるので、実際の可否は所在地の自治体に確認するのが確実です。
「認定がない=管理が悪い」ではない
ここは誤解されやすいところです。認定は管理組合が自ら手を挙げて申請する制度であり、審査を受けて落ちたマンションだけが「認定なし」なのではありません。認定件数は、国土交通省が把握しているもので2025年10月末時点の累計3,060件。全国の分譲マンションのストック規模から見れば、ごく一部です。
したがって、認定がないことを買主に対して弁解する必要はありません。売主がすべきは「認定がないこと」の説明ではなく、「管理の実態を数字で示すこと」です。その材料は、後述するとおり認定基準そのものが教えてくれます。
すでに認定を受けているなら、売却で効く場所は3つある
1|公的な一覧と不動産ポータルに掲載され、買主の目に触れる
認定マンションは、マンション管理センターが運営する「管理計画認定マンション一覧」で公開されるほか、不動産情報サイトのアットホーム「建物ライブラリー」にも情報が掲載されます。買主が物件名で検索したときに、管理状態の裏づけが第三者のサイト側から出てくる——これが、売主が自分の言葉で「管理は良好です」と言うのとの決定的な差です。資産価値が落ちにくいマンションの条件として立地や施工が語られがちですが、外から検証できる指標が増えたという意味では、管理のほうが後から効いてきます。
2|買主のフラット35が当初5年間 年0.25%下がり、フラット50も選べる
管理計画認定マンションを購入する人は、住宅金融支援機構の【フラット35】維持保全型を利用できます。金利引下げ幅は当初5年間 年0.25%(同機構公式・2026年8月時点)。同機構の試算例では、借入額3,000万円・35年・金利年2.50%のケースで総返済額の差は約41万円とされています。あわせて、返済期間が最長50年の【フラット50】の対象にもなります。
ここで冷静に見ておきたいのは、この引下げは買主のメリットであって、売却価格が自動的に上がる仕組みではないということです。効き方はあくまで間接的で、「同じ価格帯の他物件と比べたとき、買主の月々の負担が下がるぶん検討に残りやすい」という形で表れます。売り出し価格に0.25%ぶんを上乗せできる、という話ではありません。販売資料に一行入れて、資金計画の相談時に営業担当が出せるようにしておく——使い方としてはそのくらいが適正です。
3|有効期間は5年。「取った」ではなく「今も有効か」
見落とされやすいのが期限です。管理計画認定の有効期間は5年間で、継続するには更新申請が必要です(更新のない予備認定制度とはここが異なります)。制度が始まったのが2022年4月ですから、初期に認定を受けたマンションはすでに更新の時期に入っています。
管理組合の理事が交代する過程で更新が抜け落ち、「うちは認定マンションです」という認識だけが残っているケースは十分にありえます。広告や販売資料に認定をうたう前に、認定通知書で認定日を確認し、5年以内かどうかを必ず見てください。失効しているのに掲載すれば、売主・仲介会社の双方にとって説明責任の問題になります。
認定がなくても、16項目は買主が管理を見る順番そのもの
認定基準は5分野・16項目で構成されています。認定を取るかどうかとは無関係に、この16項目は「買主と金融機関が管理をどう評価するか」の要約になっています。売却前に自分のマンションを当てはめてみる価値があるのは、そのためです。ここでは、査定と買主の反応に直結する3つを挙げます。
修繕積立金が国の下限を下回っていないか
認定基準は「計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」を求めており、その水準は国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が示す目安の下限値で判定されます。専有面積1㎡あたりの月額で、次のとおりです(機械式駐車場分を除く)。

たとえば専有面積70㎡・20階未満・延床5,000㎡未満のマンションなら、下限の目安は月16,450円(235円×70㎡)です。いま月8,000円しか積み立てていないなら、その差は買主にも、買主の相談する金融機関にも見えています。金額の是非を売主が論じる必要はありませんが、「今後の増額予定が長期修繕計画に織り込まれているか」は、聞かれる前に答えを用意しておきたい論点です。
長期修繕計画が7年以内に見直され、30年以上・大規模修繕2回以上を含むか
現行の認定基準では、長期修繕計画について「作成または見直しが7年以内」「計画期間30年以上」「残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」「将来の一時金徴収を予定していない」「計画期間の最終年度に借入金残高がない」ことが求められます。これらは長期修繕計画書の写しを見れば、専門家でなくても確認できます。作成年月日が10年以上前で止まっている計画書は、それだけで買主の不安材料になります。
3か月以上の滞納が全体の1割を超えていないか
経理面の基準は「管理費と修繕積立金の区分経理」「修繕積立金会計から他会計への充当がないこと」、そして「直前事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること」です。滞納は管理組合の体力を直接削るだけでなく、売買の場面でも尾を引きます。とくに自分の住戸に滞納がある場合は、管理費の滞納が買主に承継される仕組みを先に押さえたうえで、引き渡しまでの精算段取りを組んでおく必要があります。
「管理計画認定」と「★の管理適正評価」は、別の制度
もうひとつ整理しておきたいのが、名前が似ている2つの制度の区別です。マンション情報サイトで見かける★の数(6段階)は、国の認定ではありません。一般社団法人マンション管理業協会が運営するマンション管理適正評価制度の評価結果です。
| 比較の観点 | 管理計画認定制度 | マンション管理適正評価制度 |
|---|---|---|
| 運営 | 地方公共団体(国の法律に基づく) | マンション管理業協会(民間) |
| 対象地域 | 推進計画を作成した市区・都道府県のみ | 全国 |
| 審査項目 | 16項目+自治体の独自基準 | 30項目(16項目を含む) |
| 結果の表し方 | 認定される/されない | ★0〜★5の6段階 |
| 有効期間 | 5年 | 1年(毎年更新) |
| 申請の主体 | 管理組合の管理者等 | 管理組合(管理会社経由) |
普及の度合いにも差があります。適正評価制度の登録は2026年6月末時点で12,268件(同協会公表)で、うちワンストップ申請によって国の認定も取得したマンションが2,930件。★はあるが国の認定はない、という組み合わせはごく普通に起こります。売主としては、自分のマンションにどちらがあるのか(あるいは両方ないのか)を、管理会社に一度確認しておけば足ります。
なお、同協会が公表している登録マンションの集計は、管理に前向きな管理組合が自主的に登録した母集団である点に注意が必要です。そのうえで見ても、修繕積立金の額が国の基準額を満たしているのは83.8%、長期修繕計画が全要件に準拠しているのは60.3%にとどまります(2026年6月末時点)。登録するほど意識の高い管理組合でもこの水準だという事実は、逆に、自分のマンションで整っている項目をきちんと示す価値を裏づけています。
大規模修繕の直後に売ると、固定資産税の減額は買主の手に渡る
認定マンションの特典として語られるマンション長寿命化促進税制は、売主の手取りという観点では扱いに注意が要ります。制度の骨格はこうです。
- 対象は築20年以上・総戸数10戸以上・過去に長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を行っている分譲マンション
- 加えて、管理計画の認定を受けており、2021年9月1日以降に修繕積立金をガイドラインの水準まで引き上げていること
- 長寿命化工事の完了が2023年4月1日〜2027年3月31日であること
- 効果は工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税を、6分の1〜2分の1の範囲内で減額(割合は市町村の条例による。専有部分100㎡相当分まで)
- 申告は工事完了から3か月以内。固定資産税の賦課期日(1月1日)時点と申告時点の両方で認定を受けている必要がある
ここで売主が押さえるべきなのは、減額されるのが「工事完了の翌年度分」だという点です。固定資産税は1月1日時点の所有者に課されますから、大規模修繕の完了後、翌年の1月1日を迎える前に引き渡してしまえば、減額の恩恵は買主のものになります。引き渡し時に行う固定資産税の日割り精算はその年度分の話なので、これとは別勘定です。
もっとも、これを理由に売却時期をずらす判断はおすすめしません。減額は建物部分の1年分に限られ、金額としては数万円規模にとどまることが多いためです。売却時期は相場と自分の住み替え事情で決め、減額は「買主に伝えられる材料が一つ増えた」と捉えるほうが実際的です。なお工事完了の期限が2027年3月31日に迫っているため、管理組合で工事を検討中なら、この期限は共有しておく価値があります。
2027年4月から認定基準が変わる
2026年7月31日に公布された省令・告示により、2027年(令和9年)4月1日から認定基準が見直され、あわせて分譲事業者も申請できるようになります。2027年4月1日以降に自治体へ申請する場合は、見直し後の基準が適用されます。管理組合の管理者等が申請する場合の主な変更点は次のとおりです。
- 長期修繕計画の作成・見直しの期限が「7年以内」から「申請日前5年以内」へ短縮(更新申請では従前の認定日から申請日までの間)
- 「計画期間全体の修繕積立金の総額が、計画期間内に見込まれる修繕工事費の総額を下回らないこと」を新設
- 管理規約に、管理者等・監事の任期(2年を超えない範囲)、利益相反取引の防止、組合員による総会招集の請求、標準管理規約が定める総会議決事項を定めていること
- 防災に関する方針を記載した書類(防災訓練の実施方針・防災情報とその周知方法・防災物資等の備蓄方針・緊急時の活動体制)を作成し、区分所有者に周知していること
売主の視点で意味を持つのは、すでに認定を受けているマンションも、5年後の更新時には新しい基準で審査されるという点です。とくに管理規約の改定を伴う項目(任期・利益相反・総会招集・議決事項)は、規約改正が必要になるため準備に時間がかかります。更新が近いマンションを売る場合、「更新の見込みが立っているか」まで管理組合に確認しておくと、買主からの質問に確度をもって答えられます。
売却前に、この順番で確かめる
ここまでを、売主が実際に動く順に並べ直します。いずれも管理会社への1本の問い合わせで大半が揃います。
- 認定の有無と認定日を管理組合・管理会社に確認する。認定があるなら通知書の写しを取り寄せ、有効期間5年の残りを数える
- 適正評価制度の★の登録があるかもあわせて確認する(有効期間1年なので、こちらは登録日がより新しいはず)
- 認定・評価のいずれもなければ、長期修繕計画書の写し・直近の貸借対照表と収支計算書・修繕履歴・総会議事録を取り寄せる。認定基準16項目は、この4点で大半が説明できる
- 取り寄せた資料を媒介契約の時点で仲介会社に渡す。買付が入ってからでは、重要事項調査報告書の取得と並行することになり後手に回る
- 認定がある場合は、販売図面に認定の旨とフラット35維持保全型が使える旨を記載してもらう。ただし価格への上乗せ材料としては扱わない
買主に管理を評価してもらう作業は、媒介契約の選び方と同じで、売り出す前の準備でほぼ決まります。
認定制度をめぐって売主から出る質問
売り出し中です。管理組合に申請を急いでもらえば、引き渡しまでに間に合いますか。
現実には難しいと考えてください。認定申請には総会の決議が要り、基準を満たしていない項目があれば長期修繕計画や修繕積立金の改定を先に決議する必要があります。臨時総会を招集する手もありますが、他の区分所有者にとっては「売る人の都合」で招集される総会です。売却のために管理組合を急かすより、いま出せる資料を揃えるほうが、同じ時間で確実に効きます。
広告に「管理計画認定マンション」と書いてもらうには、何を渡せばよいですか。
自治体が交付した認定通知書(変更認定を受けていれば変更認定通知書)の写しです。あわせて認定日を伝え、有効期間5年の範囲内であることを仲介会社と共有してください。マンション管理センターの公開サイトにも掲載されているため、仲介会社側でも照合できます。
隣の棟には★4の登録があるのに、うちは何もありません。査定で不利になりますか。
★や認定がないこと自体が減額要因になるわけではありません。査定で効くのは管理の実態のほうで、その実態は長期修繕計画・修繕積立金の水準・滞納状況・修繕履歴という具体的な資料で示せます。不利になるとすれば、それらの資料が出てこないときです。認定や★は、その資料を第三者が確認済みだと示す近道にすぎません。
認定を受けた翌年に大規模修繕をしました。固定資産税が下がると聞きましたが、売ったあとでも私に戻りますか。
戻りません。減額されるのは工事完了の翌年度分で、固定資産税はその年の1月1日時点の所有者に課されます。その日より前に引き渡していれば、減額を受けるのは買主です。また申告は工事完了から3か月以内に区分所有者が行う必要があるため、期限内に自分がまだ所有者であるかどうかで扱いが変わります。管理組合が用意する証明書の配付時期とあわせて確認してください。
2027年4月に基準が変わるなら、いま認定を取っても意味がないのでは。
そうとは言えません。2027年4月1日以降の申請に新基準が適用されるという整理なので、現行基準で認定を受けたマンションの認定がその時点で無効になるわけではありません。効いてくるのは更新のタイミングです。管理規約の改定や防災方針の作成には時間がかかるため、早めに認定を取って運用を整えているマンションのほうが、更新の局面では有利に働きます。
認定は「取りにいく」ものではなく、「あるものを正しく出す」もの
管理計画認定制度は、売主が売却のために操作できる変数ではありません。申請主体は管理組合で、総会と5年の有効期間という時間軸で動いており、売却の3〜6か月とはリズムが違います。
だからこそ、売主がやるべきことははっきりしています。認定があるなら認定日を確かめて正確に出す。ないなら、認定基準16項目が求めている資料そのもの——長期修繕計画・会計・滞納状況・修繕履歴——を、売り出す前に揃えておく。制度は、買主が管理の何を見るのかを国が言語化してくれたものだと考えると、認定の有無にかかわらず使い道があります。
最新の認定状況や自治体ごとの独自基準は変わっていきます。実際に申請・更新を検討する段階では、所在地の自治体とマンション管理センターの公開情報で最新の内容をご確認ください。








