マンション売却に消費税はかかる?個人売主の課税・非課税を解説
2026年7月14日

消費税率は2019年10月1日に10%へ引き上げられ、2026年7月時点でも10%のままです(今後の引き上げは決まっていません)。取引金額が大きいマンションでは、「売却代金にも消費税がかかるのでは?」「手取りはいくら減るのか」と不安になる方が少なくありません。
結論からお伝えすると、個人がマイホームとして使っていたマンションを売る場合、売却代金に消費税はかかりません。ただし、売却にともなって支払う費用のほうには消費税がかかるもの・かからないものが混在します。宅建士として実務でご説明している内容を、手取り計算に必要な順序で整理します。
マンション売却価格に消費税分をプラスできるのか?
消費税は「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」に課される税金です。個人が自宅(マイホーム・セカンドハウス・別荘)を売る行為は「事業として行う取引」にあたらないため、建物部分を含めて消費税の課税対象外となります(国税庁「消費税等と譲渡所得」)。したがって、売主が個人であれば売却代金に消費税を上乗せして買主に請求することはありませんし、消費税を納める必要もありません。
一方、土地の譲渡は、売主が個人でも事業者でも消費税は非課税です(借地権などの土地の上に存する権利も同じ扱いです)。マンションの売買代金には敷地の共有持分=土地の価格が含まれていますが、この部分に消費税がかかることはありません。
例外:売主が「課税事業者」になっているケース
注意が必要なのは、賃貸に出している投資用マンションや店舗・事務所用の物件を、消費税の課税事業者が売却する場合です。この場合は「事業に付随して行う資産の譲渡」にあたり、建物部分が消費税の課税対象になります(土地部分は非課税のままです)。
課税事業者かどうかは、おおむね次の基準で判定されます(国税庁「納税義務の免除」)。
- 個人事業者は、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。
- 特定期間(前年1月1日〜6月30日)の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超える場合も課税事業者になります。
- インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしている場合は、課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者として申告・納税が必要です。
マンション売却に必要な諸費用に消費税はかかるのか?
売却代金が非課税でも、売主が支払う費用には消費税がかかるもの(役務の提供)があります。手取り(売却額−費用−税金)を計算するときは、税込の金額で見積もってください。
つまり、個人がマイホームを売るときに消費税を意識すべきなのは「仲介手数料」「司法書士報酬」「ローン完済の事務手数料」の3つとお考えいただければ十分です。いずれも金額そのものは大きくても、消費税分は見積書・請求書に明示されます。
| 売却でかかる費用 | 消費税 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 課税(10%) | 不動産会社による役務の提供。上限額の計算は下記参照 |
| 司法書士報酬(抵当権抹消・住所変更登記など) | 課税(10%) | 報酬は課税。同時に払う登録免許税は税金なので不課税 |
| 住宅ローンの繰上返済(完済)事務手数料 | 課税(10%) | 金融機関の事務手数料。金額・要否は金融機関ごとに異なる |
| 印紙税(売買契約書) | 不課税 | 税金そのもの。軽減措置は令和9年(2027年)3月31日作成分まで |
| 譲渡所得税・住民税 | 不課税 | 売却益に対する税金。3,000万円特別控除などの特例あり |
| 管理費・修繕積立金の日割精算 | 対象外 | 売主・買主間の費用分担の精算であり、売買代金とは別 |
| 固定資産税・都市計画税の精算金 | 個人売主は不課税 | 課税事業者が売主の場合、建物分は売買代金の一部として課税されることがある |
仲介手数料の上限と消費税の計算(2024年7月の改正も反映)
仲介手数料は宅地建物取引業法にもとづく国土交通大臣の告示で上限が決まっており、これに消費税がかかります。売買価格が400万円超の場合は次の速算式です。

400万円超は「売買価格×3%+6万円+消費税」で計算(消費税10%)。800万円以下の低廉な空家等は2024年7月から30万円+消費税=33万円が上限。
さらに2024年7月1日から、800万円以下の「低廉な空家等」の売買では、上限が30万円+消費税=33万円(税込)に引き上げられました(従来は400万円以下の物件で売主から19万8,000円まで)。相続した築古のマンションなど価格の低い物件では、速算式より高い手数料になることがあるため、媒介契約を結ぶ前に金額の説明と合意があるかを必ず確認してください。
なお上限はあくまで「上限」であり、実際の手数料は不動産会社との合意で決まります。手数料の多寡だけで会社を選ぶのではなく、売却力(販売活動の中身)とセットで比較するのが、結果として手取りを最大化する近道です。
仲介手数料の上限=売買価格×3%+6万円+消費税
たとえば売買価格3,000万円のマンションなら、3,000万円×3%+6万円=96万円、これに消費税10%を加えて105万6,000円(税込)が上限です。売却価格ごとの上限額(税込)は次のとおりです。
消費税率が変わるときはいつの税率が適用される?
過去の増税時(5%→8%→10%)には、「契約はいつ、引き渡しはいつ」で税率が変わるのかが実務上の論点になりました。原則は引き渡し(資産の譲渡・役務の提供が行われた)時点の税率が適用されます。ただし、増税時には経過措置が設けられ、指定日の前日までに契約したものは施行日以後の引き渡しでも旧税率が適用される、という取り扱いがされてきました。
2026年7月時点で消費税率の引き上げは決まっていませんので、現在は10%で計算して差し支えありません。将来、税率変更が公表された場合は、契約日・引き渡し日と経過措置の適用関係を、国税庁の公表資料と仲介会社に必ず確認してください。
売主からよくいただくご質問
Q. 賃貸中の投資用マンションを売ります。買主に消費税を請求すべきですか?
売主が免税事業者であれば、建物部分にも消費税は課されないため、消費税を上乗せして請求することはありません。課税事業者の場合は建物部分が課税対象となるため、売買契約書で土地・建物の価格を合理的に区分し、建物分の消費税を明示するのが一般的です。判断に迷う場合は必ず税理士にご相談ください。Q. 売買契約書の「土地・建物の内訳」は消費税に影響しますか?
売主が課税事業者の場合は、建物価格が納税額に直結するため、固定資産税評価額の比率などで合理的に按分する必要があります。個人のマイホーム売却では消費税の課税対象外ですが、内訳は買主側の減価償却や住宅ローン控除に関わるため、いい加減に決めず、仲介会社と相談して記載しましょう。Q. インボイス制度は、自宅を売る個人にも関係しますか?
個人がマイホームを売る取引は消費税の課税対象外なので、適格請求書(インボイス)を発行する必要はありません。関係するのは、事業用建物を売る課税事業者が、事業者である買主からインボイスを求められる場面です。Q. 消費税がかかる売却をした場合、申告はいつですか?
個人事業者の消費税の確定申告・納付期限は、原則として翌年3月31日です(所得税の確定申告期限=3月15日とは別)。売却益にかかる譲渡所得の申告とあわせ、期限を取り違えないようご注意ください。まとめ:手取りは「代金−費用(税込)−譲渡所得税」で見る
- 個人のマイホーム売却は、建物も含めて消費税の課税対象外。土地は売主が誰でも常に非課税です。
- 賃貸・事業用の物件は、売主が課税事業者のときだけ建物部分が課税されます。
- 消費税を意識するのは仲介手数料・司法書士報酬・ローン完済の事務手数料。手取り計算は税込で行ってください。
- 800万円以下の物件は、2024年7月から仲介手数料の上限が33万円(税込)になり得ます。媒介契約前の説明・合意を確認しましょう。








