厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、2024年の離婚件数は18万5,904組でした(同年の婚姻件数は48万5,092組)。離婚はもはや珍しいことではありませんが、家を買うときに離婚を想定している人はまずいません。そのため、いざ離婚となると
「家と住宅ローンをどうするか」は最もトラブルになりやすい問題のひとつ です。実務でも、取り決めが曖昧なまま別れた結果、後から返済トラブルに発展するケースが少なくありません。
この記事では、離婚時の住宅ローンの扱いを「住み続ける場合」「売却する場合」に分けて、売主・所有者の立場から整理します。
最初に確認すべきは「名義・債務・保証」と「家の時価」
具体的な話し合いの前に、次の4点を書面(登記事項証明書・ローン契約書・返済予定表)で確認してください。
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家の名義 (単独名義か共有名義か)
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住宅ローンの債務者 (単独か、ペアローン・連帯債務か)
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連帯保証人 (配偶者が保証人になっていないか)
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ローン残高と家の時価
家やマンションは財産分与の対象になるため、時価の把握が出発点です。時価は、複数の不動産会社の査定を取って把握するのが一般的で、争いが大きい場合には不動産鑑定士による鑑定を利用することもあります。
どちらかが住み続ける場合の代表的なパターン
パターン1:ローン名義人が住み続け、相手は債務者でも保証人でもない
たとえば夫名義のローンで夫が住み続け、妻が債務者・連帯保証人のどちらでもない場合、妻が返済義務を負うことはありません。この形が、離婚後の関係としてはもっともシンプルです。
パターン2:ローン名義人が出ていき、名義人でない側が住み続ける
夫名義のローンのまま妻子が家に残るケースは要注意です。
夫が返済を滞納すると、金融機関は期限の利益を失わせて一括請求し、家が競売にかけられる可能性があります 。住んでいる妻が滞納の事実を知らされないまま、ある日突然、退去を迫られるおそれもあるのです。また、競売での売却価格は一般に市場価格を下回りやすいとされます。この形を選ぶ場合は、公正証書で返済・養育費等の取り決めを明確にし、可能であれば後述の「住む側の単独名義への借り換え」を検討すべきです。
パターン3・4:配偶者が連帯保証人(または連帯債務者・ペアローン)になっている
離婚しても、連帯保証人・連帯債務者の地位は自動的には外れません 。保証や債務は金融機関との契約であり、夫婦間の離婚協議は金融機関に対して効力を持たないためです。元配偶者が滞納すれば、家に住んでいなくても督促を受け、返済義務を負います。外れるには、代わりの保証人を立てる・別の金融機関で借り換えるなど、
金融機関の承諾 が必要です。まずは取引銀行に相談しましょう。ペアローンの場合も同様で、離婚だけでは互いの債務・保証関係は解消されません。
なお、親名義の土地に家を建てて親が担保提供しているケースでは、滞納により親の土地まで競売の対象になり得る点にも注意が必要です。
売却する場合:アンダーローンかオーバーローンかで進め方が変わる
売却額がローン残高を上回る(アンダーローン)
売却代金でローンを完済でき、手元に残ったお金は原則として財産分与の対象になります。共有名義の場合、売却には名義人全員の同意が必要です。なお、売却益(譲渡所得)が出た場合は税金の対象になり得ますが、マイホームの売却では
3,000万円特別控除 を使える場合があります。夫婦など特別な関係者への譲渡には適用されないなど条件があるため、適用可否は国税庁サイトで確認するか税理士に相談してください。
売却額がローン残高に届かない(オーバーローン)
残債が売却額を上回る場合、不足分を自己資金で埋めなければ、原則として抵当権を外せず通常の売却はできません。自己資金で補えないときは、
金融機関の同意を得て売却する「任意売却」 という方法があります。競売より市場価格に近い水準で売れやすいとされる一方、信用情報への影響など注意点もあるため、早めに金融機関や専門家へ相談することが重要です。
いずれの場合も、まず
「ローン残高」と「家の時価」を正確に把握する ことが全ての前提になります。時価の把握には、1社ではなく複数の不動産会社に査定を依頼し、金額の根拠を比較することをおすすめします。
離婚と住宅ローンのQ&A
Q. 住み続ける側に家の名義(ローン名義)を変更できますか?
A. ローン返済中の家の名義変更・債務者変更には金融機関の承諾が必要で、無断で行うと契約違反となるおそれがあります。実務では、
住み続ける側が自分の収入で新たにローンを組み直す(借り換える)方法 が現実的ですが、単独の収入で審査に通る必要があります。
Q. 離婚協議書に「夫が払う」と書けば、妻は安全ですか?
A. 夫婦間の取り決めは金融機関には対抗できません。妻が連帯保証人・連帯債務者のままなら、夫が滞納すれば妻に請求が来ます。取り決めを公正証書にしておくことは有効ですが、根本的には保証関係の解消(借り換え等)を金融機関と相談することが必要です。
Q. オーバーローンの家は売れないのでしょうか?
A. 不足分を自己資金で補って完済すれば通常どおり売却できます。それが難しい場合は、金融機関の同意を得た任意売却という選択肢があります。放置して滞納・競売に至るのが最も不利益が大きいため、早めに残債額と査定額を把握して相談を始めましょう。
離婚時の家の処理は、感情的に対立しやすいテーマだからこそ、「名義・債務・保証・時価」という客観的な事実の確認から始めることが大切です。判断に迷う場合は、弁護士・税理士などの専門家や取引金融機関に早めに相談してください。