マンション売却の確定申告・譲渡所得税をやさしく解説

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マンションを売却した場合、売却金額が購入金額より高いケースまたは安いケースのいずれの場合も、原則として確定申告が必要になります。譲渡所得の申告期限は、売却した年の翌年2月16日から3月15日まで(曜日により前後することがあります)です。特例の適用で税額がゼロになる場合や、譲渡損失を損益通算・繰越控除する場合も、確定申告をしなければ適用を受けられませんのでご注意ください。
以下では、代表的な4つのケースについて、現行の税制にもとづいた課税譲渡所得・税額の計算方法を具体的な数値例で確認していきます(金額は説明のための仮定です)。
(マンションが購入時よりも高く売れたケース)
このケースで、課税譲渡所得がプラスになる場合、所得税・復興特別所得税と住民税がかかります。課税譲渡所得は、以下のように計算します。
課税譲渡所得= 売却金額- (取得費+譲渡費用)-3,000万円の特別控除
以下、事例を確認していきます。

例1、売却金額が購入金額を上回る場合

平成15年6月1日購入、購入金額3,400万円(土地部分400万円、建物部分3,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額6,200万円

取得費と減価の額

取得費の計算は、以下のように計算します。
取得費= 土地の購入金額 + (建物の購入金額-建物の減価の額)
今回、土地の部分は、400万円ですが、建物部分は、購入時の3,000万円から建物の価値の減少である減価の額を差し引く必要があります。
減価の額は、建物の取得価額(購入時の代金および手数料等)、耐用年数、償却率により、計算されます(国税庁の非業務用資産の減価償却の計算方法によります)。耐用年数と償却率の内容は、以下のようになります。

耐用年数 建物の寿命年数です。耐用年数により、償却率が決定します(償却率は、償却率表参照)。非事業用(居住用)の建物は、法定耐用年数(事業用)の1.5倍の年数(1年未満切り捨て)に対応する旧定額法の償却率を用います。
償却の計算式 建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数=減価償却費相当額(国税庁タックスアンサーNo.3261「建物の取得費の計算」による現行の計算式)。
(非業務用建物の償却率表)
種別 法定耐用年数(事業用建物の場合) 償却率(事業用建物の場合) 法定耐用年数(非事業用建物の場合=事業用×1.5) 償却率(非事業用建物の場合)
木造 22年 0.046 33年 0.031
木造モルタル造 20年 0.05 30年 0.034
鉄筋コンクリート造 47年 0.022 70年 0.015

マンションのため、鉄筋コンクリート造の耐用年数(非事業用)は70年で、償却率は0.015を適用します。経過年数は平成15年6月1日から平成26年8月1日までの11年2か月ですが、1年に満たない端数のうち6か月未満は切り捨てるルールにより11年になります。
よって、減価の額は 3,000万円×0.9×0.015×11年=445万5千円です。
したがって、取得費は、400万円+(3,000万円-445万5千円)=2,954万5千円となります。

譲渡費用

マンション売却時にかかる不動産会社への仲介手数料は、宅地建物取引業法で定められた上限額の速算式(消費税10%込み)から、以下の表のように計算します(2026年7月時点。仲介手数料は消費税の課税対象です)。

(売却手数料の速算式・消費税10%込み)
売買金額 手数料(上限額)
200万円以下の場合 売買金額×5.5%
200万円超400万円以下の場合 200万円以下の部分は売買金額×5.5%、200万円超の部分は売買金額×4.4%
400万円超の場合 売買金額×3.3%+66,000円

(注)2024年7月からは、売買金額800万円以下の物件について、売主・買主の合意のもとで上限33万円(消費税込み)とする特例もあります。今回の例はいずれも800万円超のため、この特例は使いません。

よって、上記の表より、売却金額6,200万円×3.3%+66,000円=2,112,000円
また、譲渡するための売買契約書には印紙税がかかります。印紙税は、令和9年(2027年)3月31日までに作成される不動産譲渡契約書について軽減措置が適用されており、契約金額5,000万円超1億円以下の区分では30,000円です(国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」による)。なお、電子契約で締結した場合、印紙税はかかりません。
したがって、譲渡費用は、2,112,000円+30,000円=2,142,000円になります。

課税長期譲渡所得

このケースは、所有期間が5年超のため、長期譲渡所得となります。
3,000万円の特別控除を適用し、課税長期譲渡所得は以下のようになります。
6,200万円-(2,954万5千円+2,142,000円)-3,000万円=313,000円
よって、課税譲渡所得がプラスになり、所得税・復興特別所得税と住民税がかかります。

税金

このケースは、所有期間10年超のため長期譲渡所得の軽減税率が適用されます(課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分が対象。国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」による現行の税率)。
税金の計算は、以下のようになります。

  • 所得税・復興特別所得税  313,000円×10.21%=31,957円(円未満切り捨て)
  • 住民税  313,000円× 4% =12,520円

したがって、税金は31,957円+12,520円=44,477円かかります。

(マンションが購入時よりも高く売れて、かつ買い換えたマンションの購入金額が売却金額より高いケース)
このケースは、(1)と同様に3,000万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率の併用か、特定の居住用財産の買換えの特例の適用の選択適用により、税金を計算します(両方を重ねて使うことはできません)。
以下、事例を確認していきます。

例2、売却金を用いた一括払いによる買い換えが発生する場合

平成15年6月1日購入、購入金額3,400万円(土地部分400万円、建物部分3,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額 6,200万円
平成26年12月1日買い換え、購入金額 6,500万円

  1. 例1と同様に、3,000万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率を併用すると、所得税・復興特別所得税+住民税=44,477円になります。
  2. 特定の居住用財産の買換えの特例の適用
    購入金額 6,500万円>売却金額 6,200万円のため、譲渡はなかったものとみなされ、税金はゼロとなります。
    したがって、この場合は、特定の居住用財産の買換えの特例の適用をしたほうが、①の場合より、有利となります。

(注)特定の居住用財産の買換えの特例は、令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象で、譲渡対価が1億円以下であることなど一定の要件があります(国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」・国土交通省「居住用財産の譲渡に関する特例措置」参照。令和8年度税制改正で適用期限が2年延長されています)。また、この特例は税金がゼロになるのではなく、課税を将来(買い換えた家を売るとき)に繰り延べる仕組みである点に注意が必要です。

(マンションの売却金額が購入時の金額よりも安くなって譲渡損失が出て、かつ買換えたマンションのローンがあるケース)
 このケースは、他の所得と損益通算する特例および翌年以降3年以内の各年度の総所得金額等からの繰越控除の適用があります。
以下、事例を確認していきます。

例3、住宅ローンによる買い換えが発生する場合

平成15年6月1日購入、購入金額3,400万円(土地部分400万円、建物部分3,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額1,500万円
平成26年12月1日買い換え 購入金額3,000万円(住宅ローン20年)
給与所得 350万円

取得費

例1と同様で、2,954万5千円になります。

譲渡費用

不動産会社への仲介手数料 1,500万円×3.3%+66,000円=561,000円、印紙税は契約金額1,000万円超5,000万円以下の軽減後区分で10,000円とします。
したがって、譲渡費用は561,000円+10,000円=571,000円となります。

譲渡損失

譲渡損失を計算すると以下のようになります。
1,500万円-(2,954万5千円+571,000円)=△15,116,000円

繰越控除

  1. 譲渡した年(平成26年)給与所得と譲渡損失を損益通算します。350万円-15,116,000円=△11,616,000円(2年目へ繰越)
  2. 2年目(平成27年)350万円-11,616,000円=△8,116,000円(3年目へ繰越)
  3. 3年目(平成28年)350万円-8,116,000円=△4,616,000円(4年目へ繰越)
  4. 4年目(平成29年)350万円-4,616,000円=△1,116,000円→繰越控除の適用期間(3年間)が終了するため、これ以降は控除できず切り捨てとなります

(マンションの売却金額が購入時の金額よりも安くなって譲渡損失が出て、かつ購入時のローン残高が売却金額を上回る場合)
  このケースは、譲渡損失のうち、住宅ローン残高を超える場合の差額を限度として、その年の損益通算及びその年の翌年以降3年間の各年度の所得金額等から繰越控除の適用があります(買い換えをしない場合の特例です)。
以下、事例を確認していきます。

例4、売却金額が購入金額(および住宅ローン残高)に達しない場合

平成15年6月1日購入、購入金額3,400万円(土地部分400万円、建物部分3,000万円)
平成26年8月1日売却、売却金額1,500万円
(売却契約前日の時点で、住宅ローン残高あり、残高2,500万円)
給与所得 350万円

譲渡損失

例3と同様に、△15,116,000円

住宅ローン残高-売却価額

2,500万円-1,500万円=1,000万円

損益通算できる金額

△1,000万円(15,116,000円>1,000万円のため、限度額の1,000万円が適用されます)

損益通算

  1. 譲渡した年(平成26年)給与所得と譲渡損失を損益通算します。350万円-1,000万円=△650万円(2年目へ繰越)
  2. 2年目(平成27年)350万円-650万円=△300万円(3年目へ繰越)
  3. 3年目(平成28年)350万円-300万円=50万円(繰越なし)

4つのケースの比較

ここまでの4つの例を、条件と結果で整理すると以下のようになります(いずれも仮定の金額による試算です)。
状況 使う特例 結果
例1 売却益が出て買い換えをしない 3,000万円特別控除+軽減税率 税額44,477円
例2 売却益が出て、より高い家に買い換え 特定の居住用財産の買換えの特例 税額0円(課税は将来に繰り延べ)
例3 売却損が出て住宅ローンで買い換え 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 譲渡損失△15,116,000円を3年間繰越控除
例4 売却損が出て、ローン残高が売却額を上回る(買い換えなし) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 ローン残高超過分の1,000万円を限度に3年間繰越控除

よくある質問(FAQ)

Q. どの特例を使うか迷ったらどうすればよいですか?

A. 売却で利益(譲渡益)が出た場合は「3,000万円特別控除+軽減税率(所有期間10年超)」と「特定の居住用財産の買換えの特例(課税の繰り延べ)」のどちらか一方しか使えません。買い換え先が売却額より高い場合は買換え特例で当面の税額をゼロにできますが、税金がなくなるわけではなく将来に繰り延べられる点に注意が必要です。売却で損失(譲渡損失)が出た場合は、買い換えの有無によって「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(買い換えあり)と「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(買い換えなし・住宅ローン残高が売却額を上回る場合)のいずれかを検討します。いずれも要件が細かいため、確定申告前に国税庁のタックスアンサーで最新の要件をご確認いただくか、税理士にご相談ください。

Q. これらの特例はいつまで使えますか?

A. 令和8年度税制改正により、「特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例」「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の3つの特例は、いずれも令和9年(2027年)12月31日まで適用期限が延長されています(国土交通省・国税庁の公表資料による)。3,000万円特別控除と軽減税率の特例には適用期限の定めはありません。ただし税制は毎年見直されるため、実際に売却する年の最新情報は国税庁ウェブサイト等で必ずご確認ください。

Q. 仲介手数料や印紙税は譲渡費用に含められますか?

A. はい。マンション売却時に不動産会社へ支払う仲介手数料や、売買契約書に貼付する印紙税は、譲渡所得の計算上「譲渡費用」として売却金額から差し引くことができます。仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法で「売買金額×3%+6万円+消費税」(400万円超の場合の速算式。消費税率10%)と定められています。印紙税は令和9年3月31日まで軽減措置があり、電子契約であれば非課税です。登記費用(司法書士報酬・登録免許税のうち譲渡に伴うもの)やハウスクリーニング費用なども、要件を満たせば譲渡費用に含められる場合があります。

Q. 確定申告はいつ、どこにすればよいですか?

A. 譲渡所得の申告は、原則としてマンションを売却した年の翌年2月16日から3月15日まで(曜日により前後することがあります)に、住所地を管轄する税務署へ行います。特例を利用して税額がゼロになる場合や、譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用を受ける場合も、確定申告をしなければ特例の適用を受けられません。売買契約書の写しなど取得費・譲渡費用がわかる書類は、あらかじめ整理しておくとスムーズです。

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